金融界にも米中対立の影響が飛び火か=ロイター

【ニューヨーク=佐藤璃子】米金融市場で米中のデカップリング(分断)の様相が強まっている。中国企業の香港上場を支援したことを問題視し、米議会は米銀トップらに召喚状を出した。米証券取引委員会(SEC)も米市場で中国企業の上場制限を狙った取り組みを始めた。米金融界にとって成長期待の根強い中国事業は収益源の1つで、難しい判断を迫られる。

CATLは「軍事企業」、上場支援を問題視

米下院議会の米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委)は7月下旬、中国の車載電池最大手、寧徳時代新能源科技(CATL)の香港上場の新規株式公開(IPO)引受業務に関与したとして、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)とバンク・オブ・アメリカ(BofA)のブライアン・モイニハンCEOに召喚状を送付した。

「人民解放軍や共産党の軍産複合体と(CATLのあいだに)直接的なつながりがあるにもかかわらず、両者は協力を拒んできた」。中国特別委はダイモン氏とモイニハン氏への批判をつづり、8月8日までに応じるよう求めた。

既に期限は過ぎているが「銀行側の弁護士が対応を調整しているだろう。混乱を避けるために公的な声明を出さないのは問題ではない」(外交問題評議会・CFRのゾンギュアン・ゾーイ・リュー氏)。

事の発端は1月、米国防総省がCATLを中国軍と関連がある「中国軍事企業」に指定したことにある。

米国企業にはリストの中国企業との取引を控えるよう促している。同委は軍事企業を支援することは「虐殺に加担し、米国の産業を損ない、米兵を危険にさらす」として、4月にも2社にIPO業務から撤退するよう警告していた。それでも両社はCATL上場を支援したことで、委員会側が召喚状送付に踏み切った。

「第1次トランプ政権以上の圧力」 上場廃止論も 

RBCキャピタルマーケッツのジェラルド・キャシディ氏は「議会は必要と判断すればどの企業に対しても召喚状を送る権限があるが、最大手の米銀を相手に召喚状を出すことは頻繁にあることではない」と指摘する。

こうした事例を受け、米カリフォルニア大学サンディエゴ校の21世紀中国センター所長のビクター・シー氏は、米当局による米金融界への圧力は「すでに第1次トランプ政権下よりも強まっている」と指摘する。

同委は5月、SECのポール・アトキンス委員長に対し「中国共産党とつながりのある」中国企業の米国上場を廃止するよう要請する書簡を送った。

書簡を受けてか、SECは6月に外国企業が米国での上場時に適用する外国民間企業発行体(FPI)という条件を見直すべきか、意見公募(パブリックコメント)を始めると発表した。FPIとして条件を満たすと情報開示義務などの面で優遇措置を受けられるため、多くの外国企業が適用している。

SECのアトキンス委員長はFPIを満たして米国のみに上場している外国企業の多くが中国企業だと指摘する。この条件を厳しくすることで中国企業の上場を廃止したり新規上場を制限したりする狙いがありそうだ。

米銀、逆風下でも中国事業は依然重視

現時点で米銀大手は中国関連事業はいまだ収益機会が大きいとみて撤退や大幅な縮小に踏み切っていない。

米調査会社ディールロジックによると、香港のIPO市場における2025年上期の資金調達額は39億9400万ドルと日本より大きく、前年同期比では2倍になった。JPモルガンのダイモン氏は5月、中国共産党の高官との会談が報じられた。中国事業を重視する姿勢がにじむ。

今後、米金融市場にどのような影響が出るか。21世紀中国センター所長のシー氏は最近の対中強硬姿勢は議会のアピールの域を出ないとみており「金融業界は米政権に一定の影響力を及ぼしうるため、米政権が対中ビジネスを安易に規制する可能性は現時点で低い」との見立てを示した。

一方、米中ビジネス協議会は「中国企業の大型IPOが米国から香港市場にシフトすれば、米投資家の投資機会が制限されるリスクもある」と指摘する。

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