
米連邦高裁は29日、トランプ政権が4月に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき発動した「相互関税」を違法とする1審の国際貿易裁判所の判決を支持する判断を示した。トランプ大統領は自らのソーシャルメディアに「高裁は誤った」と投稿し、最高裁に上告する考えを示した。高裁判決の発効は10月14日で、最高裁で違法判断が示されるまで日本などへの相互関税は継続される見通しだ。
連邦高裁は判決で「当裁判所は、IEEPAでは大統領令で関税を発動する権限はないとの見解に同意し、原判決を支持する」と明記。憲法は広範に関税を課す権限を議会に与えており、「トランプ氏の大規模関税は権限を逸脱している」との1審判決を支持した。高裁の判事11人中、7人がこの判断に賛成し、4人は反対に回った。
トランプ氏はソーシャルメディアに「すべての関税はまだ有効だ。高裁は『関税は撤廃されるべきだ』との誤った判決を下したが、彼らは最終的に米国が勝つことを知っている」と投稿。「この決定は文字通り米国を破壊することになる」と批判し、最高裁に上告する考えを示した。
高裁はトランプ政権に上告の準備期間を与えるため、今回の違法判断の発効を10月14日に設定した。トランプ政権がそれまでに上告の手続きをとれば、最高裁が違法判決を出すまでは関税が有効とみなされる。
トランプ政権は今年4月、米国の貿易赤字の規模が極めて大きくなっていることを問題視し、IEEPAを根拠に全ての貿易相手国・地域に一律に関税を課した。さらに日本や欧州連合(EU)など約60カ国・地域に個別に関税を上乗せする「相互関税」を表明したが、個別の関税交渉を経て、8月以降は日欧に15%など新たな税率を適用している。
合成麻薬の米国への流入対策に不備があるとして、カナダ、メキシコ、中国に課している制裁関税もIEEPAを根拠にしている。
1審は米国内の中小企業などによる訴えを認め、IEEPAに基づく相互関税や制裁関税を違法と判断。これを不服としたトランプ政権が控訴していた。今回、違法判断が争われているのはIEEPAに基づく関税のみで、海外依存度の高まりによる国家安全保障上の脅威を理由にした鉄鋼・アルミニウム、自動車などへの部門別関税は訴訟の対象外となる。【ワシントン大久保渉】
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