「iPhone」を発表する米アップルのスティーブ・ジョブズCEO(2007年1月、米サンフランシスコ)=ロイター

米アップルが4月に設立から50年の節目を迎える。同社はパソコンやスマートフォンの普及で大きな役割を果たし、世界中の人々の生活や産業、社会に影響を及ぼした。そのイノベーションと浮き沈みの歴史は日本企業にとっても示唆に富む。

アップルはコンピューター業界で大型汎用機が全盛だった1976年に、個人が使える商品が必要と考えた故スティーブ・ジョブズ氏らが米シリコンバレーのガレージで設立した。

商品はパソコンから携帯音楽プレーヤーやスマホなどに広がり、IT(情報技術)に加えて、エンターテインメントや通信、出版、小売りといった幅広い業界に変化をもたらした。

アップルの歴史で特筆すべきは、ジョブズ氏が97年に経営トップとして復帰したことだろう。同社の業績は悪化し、身売り説すら浮上する状況だった。

ジョブズ氏は複雑になっていた商品群を簡素化し、一般向けノートパソコンなど4つに絞り込んだ。この判断がヒット商品の創出や効率的な事業運営につながった。選択と集中が重要という教訓は現在も十分に有効と言える。

日本企業が過度の性能競争に陥るなか、利用者の体験向上を経営の中心に据えたことにも注目すべきだ。ハードウエアとソフトの融合により使い勝手を高める手法や、直営店の運営を含むブランド構築もこうした戦略の一環で、日本企業が学ぶべき点のひとつだ。

精緻なサプライチェーン(供給網)の構築も見逃せない。現在のティム・クック最高経営責任者(CEO)はこの部門で手腕を発揮した。アップルは同氏のもとで2025年、株式時価総額が4兆ドル(約640兆円)に達した。

ただ、強さに陰りが見えるようになっているのも事実だ。

最近は消費者をあっと言わせる斬新な商品が乏しく、急速に発達する人工知能(AI)の活用も道半ばだ。ハードとソフトの強固な融合は世界各地で独占・寡占批判を招き、米中対立により供給網の見直しを迫られている。

ベテラン幹部の離任などにより世代交代の機運が高まるなか、注目が集まるのが8月で就任から15年となるクックCEOの後継者の選定だ。16万人超の社員が働く巨大企業を次の世代に円滑に引き継ぎ、イノベーションの創出を続ける努力が必要になる。

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