愛犬の「病気休暇」「ケア休暇」「忌引」――。仕事も、愛犬との時間も、両方大事にしたい。
飼い犬や猫と出社できるオフィスを整備したり、ペットのための福利厚生制度を導入したりする企業が増えているという。
2匹の「社員犬」
東京都新宿区の高層ビルやホテルが建ち並ぶ一角に、ペットフードの開発・製造を手がける「バイオフィリア」が入るオフィスビルはある。
1月下旬のこの日、2階のオフィスには2匹の「社員犬」が出社していた。
柴犬(しばいぬ)の「ちくわ」は、飼い主のそばに置かれたカートの中で静かに過ごし、チワワの「ゆに」はSNS用の写真撮影に応じていた。
休み時間は、近くの公園に散歩に出かけたり、オフィス内のドッグランでボールを追いかけたり――。他の社員はそれを気に留める様子もなく、それぞれ仕事に打ち込んでいた。
こうした「わんダフル・ワーキング制度」を本格導入したのは、会社設立から3年後の2020年だ。
その後、ペットフードや医療費などに使える月2000円(保護犬・猫は月3000円)のペット手当のほか、「忌引」や「動物ボランティア休暇」も整備した。
社長の岩橋洸太さんは「動物に関わる企業だからこそ、飼い主の気持ちを社員間で共有したかった」と話す。
ペットを飼っていない社員も2、3割いるが「犬がいるとコミュニケーションが取りやすい」と好意的に受け止めているという。
社会との間の「壁」も
だが、動物アレルギーや、ほえる、かむといったリスクもあるだけに、オフィス選びは難航した。
「『安全』に傾きすぎれば制限が増える。『ペットフレンドリー』という理念とかけ離れないように、落としどころを探すのが難しかった」
現在のオフィスは2階のフロア全てがペット可で、しつけや予防接種を済ませていれば、オフィス内も廊下も飼い主とリードを付けた状態で行き来できる好条件だが、選択肢は少なかった。
社会との間に壁を感じるからこそ、社内規定には力を入れている。
通勤ラッシュを避けつつ、業務開始には間に合うよう始業時間は午前10時にした。飼い主が制御できることは大前提だが、社内でトレーナーを招いた講習会も開く。
「小さなことでも、社員間の考え方の違いや価値観をすりあわせてルールを作ってきた。会社の核となる制度です」。そう岩橋さんは話す。
在宅ワーク中心も
リモートワークを中心にして、仕事と、ペットとの時間を両立する企業もある。ペットフードの開発やペット情報メディアの運営などを手がける「ペトコト」(東京都渋谷区)だ。
ペトコトでも年10万円を上限に、ペットの医療費や検査費、保険代などに充てられる「ペットウェルネス手当」を設けている。父母や子どもと同じ1親等扱いで忌引が取得でき、病院の付き添いなどで有給を使うことも可能だ。
社長の大久保泰介さんも夕方に愛犬の散歩に行くため「中抜け」し、再び仕事に戻ることがあるという。
こうした自由で、柔軟な働き方を支えるのは、互いの仕事をカバーし合える社内文化だという。
他の企業で働いた経験がある、執行役員の伊藤允晴さんは「前の会社では『(飼い犬の)病院に行ってから出社します』とは言いづらかった。ペットだからというよりも、仕事を空けること自体にまだ高いハードルがあるように感じました」と振り返る。
ペトコトには子どもが生まれたばかりのメンバーもいる。
「バランスを大切にする働き方は、ペットを飼っている人以外にもメリットがあるはずです」
一方で、あくまで社内向けの制度でもある。「自由に働ける分、それぞれ責任感を持ってもらうことは必要です」と大久保さんは話している。【田中理知】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。