日本生命保険系や楽天グループ傘下の運用会社が、欧州企業の株式に投資する投資信託をつくる。トランプ米政権の関税政策で米国株への投資に慎重になる投資家は多く、代わりに世界的な半導体製造装置やソフトウエアの企業がある欧州への投資機会を広げる。これまでの米国株偏重が変わる可能性がある。

ニッセイアセットマネジメントは10日に欧州株投信の運用を始める。ドイツの指数会社ソラクティブが算出する株価指数に連動した投信だ。指数はオランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングやスイスの製薬大手ノバルティスなどで構成する。

楽天投信投資顧問も8月、欧州株投信をつくった。独ソフトウエアSAPや英製薬大手アストラゼネカで構成する欧州株指数と連動し、純資産総額で100億円規模を目指す。ニッセイアセット、楽天投信が欧州株指数に連動する投信を設定するのは今回が初めてとなる。

運用各社が欧州株投信の設定に動くのは、投資家が米国株の代替投資先として欧州株に注目しているためだ。調査会社EPFRの調べでは、25年上期(1〜6月)の米国株ファンドへの純資金流入額は321億ドル(約4兆7000億円)と前年同期比で65%減少した。トランプ米政権の関税政策で一部の投資家は米国株投信への投資に二の足を踏んでいる。

一方、欧州株ファンドには同期間で425億ドルの資金が純流入した。流入超になったのは1〜6月としては21年以来4年ぶりだ。第一生命経済研究所の田中理首席エコノミストは「欧州連合(EU)全体で財政拡張が見込まれるなか、景気回復期待の高まりから欧州株に資金が流入している」と話す。

日本で欧州の株式投信を増やす余地はある。投資信託協会によると、欧州株投信は7月末時点で51本、純資産残高は3429億円。363本、約31兆円ある北米株の投信に比べ少ない。

SOMPOアセットマネジメントは8月下旬、英金融大手HSBC銀行のドル建て社債に投資した上で、得られる利息でスイスのネスレ、製薬大手ロシュ株などに投資する投信をつくった。社債投資で元本を保証し、利息を活用して欧州株の値上がり益を狙う。他の大手運用会社も欧州株投信の立ち上げを検討する。

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