
JR東日本は久留里線・久留里―上総亀山駅間(9・6キロ)の廃止を表明し、代替バスを導入する方向で千葉県君津市と協議している。バスへの転換で「交通利便性を高める」と主張するが、住民説明会では廃止に反対する声が相次いだ。代替バスの課題も浮上しており、住民の理解を得るには遠い状況だ。【宮田哲】
「利用は極めて少なく、鉄道の大量輸送ができるメリットを発揮できない」

8月6日夜、終点の「上総亀山駅」に近い亀山コミュニティセンターで開かれた住民説明会。JR東の担当者は住民約40人を前に、はっきりと「廃止」を告げた。
「(同区間を)残してほしい。市は市民のために働くべきなのに、JRを応援するのが分からない」。住民の1人が声を上げると、拍手がわき起こった。他の住民からも廃止への不満や、JR東と歩調を合わせる市への苦言が相次ぐ。一方、「利便性が上がるならバス転換でいい」と理解を示す人もいた。
乗客は10分の1以下に

JR東は2024年11月に久留里―上総亀山駅間の廃止を表明。その後、市とJR東が代替交通として、1日13往復の路線バス案をまとめた。片道で計算すると計26本で、同区間の鉄道運行本数(上下17本)を上回る。
市とJR東は7~8月に亀山を含む3地区で説明会を開いた。バスの案に意見を求めてダイヤなどを調整することが目的で、鉄道の存廃に関する発言を控えるよう要請。そのことが住民のさらなる反発を招いた。
久留里―上総亀山駅間は厳しい状況が続く。1日当たりの利用者数は、国鉄民営化でJR東が発足した1987年度と比べると10分の1以下に。マイカー普及で鉄道離れが進んだ上、沿線の過疎化が拍車をかけた。
その結果、運輸収入を費用で割った線区別の収支率は0・7%(2023年度)。100円の収入を得るのに1万3580円の費用がかかる計算だ。
市は反対から転換

JR東の要請を受けて、県、市、JR東、有識者、住民代表で構成する「沿線地域交通検討会議」が設置された。検討会議は24年10月の報告書で、同区間は「移動需要に対して輸送力が過大」で、通勤通学などには「バスを中心とした定時定路線型の交通手段」が考えられるとまとめた。
市はかつて廃止反対をJRに伝えていたというが、現在では廃止を前提に代替交通の確保に動いている。石井宏子市長は「住民に次の交通手段を早く示して、不安を解消したいと考えた」と説明する。
ただ、代替交通案には課題が指摘されている。
案では、路線バスが上総亀山駅付近と久留里駅などの間を往復し、鉄道より便数を増やすことになっている。しかし、上総亀山駅付近から木更津駅に向かうには途中でバスから鉄道へ乗り換える必要があり、今よりも時間がかかりそうだ。
料金は市のコミュニティバスと同じ(65歳未満の大人で200円)だ。通学ルートによっては通学費用が高くなる可能性を住民から指摘されており、市は対策を検討している。
市が路線バス会社に運行を委託し、委託費用はJR東が全額負担する方針だ。その負担をいつまで続けるのか、JR東は明言していない。
市は住民の意見を踏まえて代替交通案を修正し、住民代表や公共交通機関の事業者らが参加する会議に諮る。JR東は今後、国土交通省に廃止届を出す方針で、実現すればJR東では災害による被災路線を除いて初の路線廃止になる。
反対する住民でつくる「久留里線と地域を守る会」の三浦久吉代表(85)は「鉄道がなくなれば、ますます寂しい地区になるという危機感を持っている。そうした多くの住民の思いを、JRも市も聞き取ってもらいたい」と訴える。
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