米グーグルの本社=米西部マウンテンビューで2023年11月18日、大久保渉撮影

 欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は5日、米IT大手グーグルに対し、オンライン広告を巡る優位性を乱用してEU競争法(日本の独禁法に相当)に違反したとして29億5000万ユーロ(約5000億円)の制裁金を科したと発表した。EUの米巨大IT企業への厳格な規制を従来批判してきたトランプ米大統領は「不公平だ」と反発し、報復措置も示唆。米EU間で関税交渉を含めた外交上の摩擦が強まる可能性がある。

 トランプ氏は5日、自身の交流サイト(SNS)に欧州委の決定について「差別的な行為を許さない」と投稿して批判した。不公正な貿易を行う国への一方的な制裁を認める通商法301条に基づき、報復する可能性も示唆した。

 グーグルは、広告主とニュースサイトなどの掲載先を仲介するビジネスで、大きな存在となっている。欧州委は、グーグルが2014年からこうした立場を利用して他社の仲介サービスが不利になるよう運用し、高い手数料を得るなどしたとみている。

 欧州委はグーグルに、60日以内に改善策を報告することも求めた。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、グーグルは制裁金について「不当だ」と反発し、争う方針を示した。

 アップルやメタ(旧フェイスブック)など、他の米大手IT企業もEUから巨額の制裁金を科されており、トランプ政権は批判を繰り返していた。

 FTなどによると、欧州委内では、トランプ政権を刺激して関税を巡る通商交渉に影響する事態を懸念する声が出て、決定は延期されていたという。

 ただ、競争政策を担うリベラ上級副委員長は5日に出した声明で、現段階で考えられる有効な改善策は「(グーグルの)ネット広告ビジネスの一部売却だ」と踏み込んだ。

 その上で「我々は恐れもえこひいきもなく、欧州で活動するすべての企業に対し、ルールをきっぱりと、公平に適用し続ける」とも述べ、トランプ政権や米巨大ITの「圧力」に対抗する姿勢を鮮明にした。【ブリュッセル岡大介】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。