石破総理大臣は、7日記者会見を開き「かねてより『しかるべきタイミングで決断する』と申し上げてきた。アメリカの関税措置に関する交渉に一つの区切りがついた今こそそのタイミングだと考え、後進に道を譲る決断をした」と述べ、総理大臣を辞任する意向を表明しました。

また、臨時の総裁選挙の実施を求める書面の提出が8日行われる予定だったことを踏まえ、「このまま進めば党内に決定的な分断を生みかねず、私の本意でない」と説明しました。

これを受けて、自民党は8日午前、役員会と総裁選挙管理委員会を開いた上で予定されていた手続きを中止し、その後、石破総理大臣の後任を選ぶ総裁選挙の形式や日程について協議する見通しです。

自民党内では、党再生の機会にするため党員の意見を反映させるべきだとして「党員投票」を行うのが望ましいという声が出ていて、森山幹事長は「できるだけ党員が直接、参加できる形を模索することは大事だ」と述べました。

ただ、公明党や野党からは、自民党の都合で政治空白を長引かせるべきではなく、できるだけ早く物価高対策などを議論する環境をつくる必要があるという指摘が出ています。

一方、総裁選挙の立候補に向けた動きも始まっています。

茂木前幹事長は、党の再生にみずからの政治経験を生かしたいとして、去年に続いて、立候補する意向を固めました。

週内にも記者会見し、党の立て直しや野党との連携のあり方、経済政策などを発表することにしています。

また、小林鷹之元経済安全保障担当大臣は「ベテランも若手も『ワン自民』でしっかりまとまれる体制をつくることが急務だ。仲間としっかり相談していきたい」と述べました。

さらに、去年の総裁選挙で、石破総理大臣と決選投票まで争った高市前経済安全保障担当大臣や1回目の投票で最も多い議員票を獲得した小泉農林水産大臣、それに林官房長官らの動向が焦点となります。

経済分野で残された課題は

石破総理大臣は辞任する意向を表明しましたが、経済分野では多くの課題が残されています。

《物価高対策》
当面の重要課題が物価高対策です。

さきの参議院選挙では給付や減税の是非について激しい論争が行われました。

このうちガソリン税の暫定税率については、与野党6党で年内の廃止で合意し、協議が行われていますが、財源などをめぐって議論は難航しています。

また、給付を行う場合の詳細な設計や消費税の減税を実施すべきかなどについては、これから検討される見込みで、家計の支援をどう進めていくかが焦点です。

こうした当面の対策に加え、賃金が安定的に物価を上回る経済を作り出せるのかも課題です。

春闘では高い水準での賃上げが続き、最低賃金も大幅な引き上げによってすべての都道府県で時給1000円を超えることになりました。

ただ、実質賃金は、最近までマイナス圏に沈むことが多く、消費も力強さに欠けると指摘されていて、持続的な賃上げや生産性の向上につながる政策も求められています。

《コメ問題》
コメ価格の高止まりも引き続き、課題です。

政府は、ことしに入って備蓄米の放出によって価格の抑制を目指してきたほか、先月には政策を根本的に見直し、コメの増産にかじを切る方針を打ち出しました。

今後、新米の流通が本格化しますが、コメの価格は落ち着くのか、また、コメの増産をめぐって、生産者、消費者ともに納得感が得られる仕組みを構築していくことができるのかが焦点となります。

《関税》
アメリカの関税措置への対応も求められます。

関税措置をめぐる日米交渉の合意を受けて、先週、トランプ大統領は、自動車などへの関税を15%に引き下げる大統領令に署名しました。

ただ、関税の影響が幅広い業種で表面化してくるのはこれからと見られ、影響を最小限に抑えることができるのか、また企業の資金繰りをどう支援していくのかなどが課題となっています。

経団連 筒井会長「スピーディーに政策の遂行を」

石破総理大臣が辞任する意向を表明したことについて、経団連の筒井会長はコメントを発表し「先の参議院選挙の総括を踏まえ、政治を前に進めるために重い決断をなされたものと受け止めている。石破政権は、外交面では難しい対米関税交渉に尽力し、日米合意を実現するとともに、内政面では、少数与党による政権運営の中で、与野党間で真摯(しんし)に協議を重ね、今年度予算や各種法案を成立させた」としています。

その上で「内外には待ったなしの重要政策課題が山積している。総裁選挙で選ばれる新しいリーダーには、党内の一致結束を図ったうえで、安定した政治の態勢を確立し、政策をスピーディーに遂行していただきたい」としています。

日商 小林会頭「切れ目ない政策の実行を」

また、日本商工会議所の小林会頭はコメントを発表し「わが国経済は成長型経済への移行に向けたまさに正念場にある。足元の物価高やアメリカ関税措置に伴うサプライチェーン問題に直面する中小企業への支援は待ったなしであり、切れ目ない政策の実行が不可欠である」としています。

その上で「国会におかれては、政治空白を一日も早く収束させるべく、各政党が責任ある議論を通じて速やかに次期内閣総理大臣を選出し、国民の負託に応え得る新体制を構築していただくことを強く期待する」としています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。