JR東日本は山手線に自動運転を導入する

JR東日本は9日、JR山手線に2035年までに運転士が乗車しない自動運転システムを導入すると発表した。新幹線にも30年代半ばに入れる計画で、導入後は他の路線に順次広げる計画。人手不足が深刻になるのを見据え、業務効率を高めて人員配置を最適化する。安全への投資も進め、鉄道事故を31年度までに23年度比で3割減らす目標を掲げた。

鉄道を中心としたモビリティ事業の中長期における成長戦略に盛り込んだ。異常時に対応する保安要員は同乗する。山手線への導入後は、常磐線など他の在来線にも拡大する。

35年ごろまでに保安要員と乗客がやりとりできる連絡装置を車両に設置する。保安要員や駅の係員への訓練も手掛け、自動運転の導入後もトラブルが起こりにくい仕組みを構築する。

同社は鉄道の業務効率化を進めている。上越新幹線においては自動運転を予定しており、北陸新幹線や東北新幹線にも広げていく。在来線では常磐線や南武線といった首都圏の路線でもワンマン運転を始めた。

鉄道事業の成長戦略について説明するJR東日本の記者会見(9日、東京都渋谷区)

同日記者会見した喜勢陽一社長は「(運転の)仕事はなくなるが、人が担わなければならない仕事はむしろ増えていく」と説明した。余剰人員は鉄道利用者に旅先を提案したり、駅における困りごとに対応したりと、人にしかできない業務に割り振る。

安全性の向上にも取り組む。踏切の動作に人工衛星の情報を活用するシステムを導入。非常停止ボタンが押された際に列車が自動で止まるようにし、人や自動車と接触するなどの鉄道運転事故を減らす。

ホームと列車の間を仕切るホームドアの設置を増やし、31年度までにホームにおける人身事故を23年度比で8割減らす。喜勢社長は「システムに守られた運転で安全性を今まで以上に高めることがお客さまへのメリットとなる」と話した。

このほか、20年後の駅の将来像を示した。駅には改札がなくなるほか、広くなったホーム上でコンサートや物産市を開催する。

空飛ぶクルマの発着場所も設け、鉄道からの乗り継ぎを想定する。第1弾として、盛岡駅(盛岡市)周辺で28年ごろの利用開始を目指している。岩手県雫石町で26年春に開業するリゾートホテルとの送迎に用いる。

JR東は7月に発表したグループ経営ビジョンにおいて、鉄道などのモビリティ事業の売上高にあたる営業収益を32年3月期に25年3月期比で2000億円増やし、2兆円を超える規模にする目標を掲げた。

今回の成長戦略では目標達成に向け、インバウンド(訪日外国人)客向けの販促を強化する方針を盛り込んだ。具体的には海外の旅行サイトで新幹線のチケットを含む旅行商品を予約しやすくする。国内客についても、コンサートへの誘致などを通じて沿線地域を目的とした旅行を促す。

JR東は同日、東北・山形新幹線のダイヤを11月中旬から臨時列車も含めて完全復旧させることを明らかにした。故障が相次いでいた新型車両「E8系」を順次復帰させる。

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