日本ハムが立川まつり国営昭和記念公園花火大会で実施したドローンショー。看板商品のシャウエッセンの演出がX(ツイッター)で話題となった=日本ハム提供

 薄暮時の夜空に浮かぶ500機のドローン。その隊列が描いた立体的なソーセージが肉汁を飛び散らせながら「パリッ」と割れると、観客から笑い声と歓声があがった。

 巨大「シャウエッセン」が登場したのは、7月に東京で行われた花火大会。日本ハムが看板商品の広告としてドローンショーを実施した。

 近年、こうしたドローンショーを花火大会に導入するケースが増えているが、背景には花火大会とドローンショーの「相性の良さ」があるのだという。

経験したことのない反響

 「『おいしそう』と思ってもらえるよう、表現の細部にまでこだわりました」

 日本ハムマーケティング室ブランドマネジメント課の岡村香里課長の狙い通り、花火大会の来場客からは笑い声や歓声が上がった。食感まで伝わりそうな動画が交流サイト(SNS)に投稿されると、万単位の拡散(万バズ)も目立ち、X(ツイッター)では一時「シャウエッセン」のワードがトレンド入りした。

 花火大会でこうしたドローンショーを導入する動きはどんどん広がっている。

日本ハムが期間限定商品として発売した「シャウエッセン花火」=日本ハム提供

 日本ハムは7月1日、かんだ瞬間に黒コショウなどの香辛料の刺激や香りが花火のように広がる「シャウエッセン 花火」を期間限定商品として発売した。

 大阪・関西万博でドローンショーが話題になっていたことや、表現の幅などに魅力を感じ、今回初めてドローンを広告手法として採用したという。

 ドローンを飛ばしたのは7月26日に行われた立川まつり国営昭和記念公園花火大会で、公園に集まった約34・5万人(主催者発表)が楽しんだ。

 岡村さんは「約34・5万人が同時に同じ空間でショーを見てリアクションを共有できます。ドローンショーの様子に関するSNS投稿が同時多発的に広がっていくのも、今までの広告の反響とは違っていました」と振り返った。

花火大会主催者にとってのメリット

 各地の花火大会でドローンショーを手掛ける「レッドクリフ」(東京都)によると、打ち上げ花火をメインとするイベントでのドローンショーの開催は20件(開催見込み含む、8月末時点)と、2022年比で4倍に成長した。

 レッドクリフ代表取締役CEOの佐々木孔明さん(30)は「大勢が集まって注目する花火大会の上空は、広告プロモーションの場所としても魅力的。問い合わせも多く、花火大会でドローンショーを入れるのが当たり前になってきた」と手応えを語る。

 花火大会では、企業が協賛する場合、企業・商品名が読み上げられることが多かった。

ドローンショーでは、企業のサイトへ誘導できるQRコードも描くことができる=レッドクリフ提供

 ドローンショーであれば企業ロゴから、スマートフォンで読み取ってサイトへ誘導できるQRコードまで、ドローンのLEDライトで構成できる。視覚的にも印象に残るため、企業側はより広告効果が期待できる。

 花火大会の実行委員会側にとっても協賛金や集客の増加が見込めるとして、注目が集まっているようだ。

花火と相性が良い理由

 ドローンショーが花火大会で広がりをみせるカギとなっているのは「保安エリア」だ。

 ドローンショーは、飛行にあたっての周囲の安全を確保するため、一定のスペースや保安エリアを必要とする。

 この保安エリアの考え方は花火大会と同様のため、運営するにあたっての相性も良いのだという。

 開催手法を大幅に変える必要がないうえに、運営側とスポンサー側双方に一定のメリットが期待できるため、採用する大会が増えているとみられる。【松山文音】

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