
運送事業者など法人契約者向けの軽油販売を巡り価格カルテルを結んだ独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いがあるとして、公正取引委員会は10日午前、石油元売り大手や総合商社の系列会社でガソリンスタンド(GS)を運営する8社の強制調査に着手した。関係者への取材で判明した。検察への刑事告発を視野に調査を進める模様だ。
強制調査の対象は、東日本宇佐美(東京都)▽太陽鉱油(同)▽共栄石油(同)▽ENEOSウイング(名古屋市)▽エネクスフリート(大阪市)▽新出光(福岡市)▽キタセキ(宮城県)▽吉田石油店(香川県)――の8社。

いずれも法人契約者向けにネットワーク化された「フリートSS(サービスステーション)」と呼ばれるGSを展開し、顧客は主に軽油を燃料とするトラックなどの大型車を扱う運送事業者で、大手宅配会社も含まれるとみられる。
関係者によると、8社の営業担当者らは定期的に会合を開くなどして情報交換し、東京都内の運送事業者向けに販売する軽油の価格を引き上げるなど、価格調整を繰り返していた疑いがあるという。
資源エネルギー庁によると、東京都内の1リットル当たりの軽油価格は157・5円(9月1日現在)で全国平均を上回る。8社がそれぞれ自社の利益確保のために価格を高止まりさせていたとすれば、運送事業者の経営に影響するばかりでなく、輸送費の高騰に伴う価格転嫁で消費者の負担増につながる恐れがある。
8社のうち共栄石油と新出光を除く6社については、公取委が5月、神奈川県内での軽油販売を巡り価格カルテルを結んだ疑いで立ち入り検査をしており、その調査過程で、同様の価格カルテルを東京都内でも結んでいた可能性が浮上したとみられる。

公取委の強制調査は、東京オリンピック・パラリンピックを巡る談合事件での2022年11月以来。独禁法で認められた「犯則調査権」に基づき、悪質な談合やカルテルなど「国民の生活に広範な影響を及ぼす悪質な事案」などに対する刑事責任の追及を念頭に置いているとされる。【山田豊】
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