国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)や京都大学は11日、人型ロボットがスケートボードの複雑な技をこなす技術を開発したと発表した。人間の運動を模倣して学習する独自の人工知能(AI)「サイボーグAI」を搭載し、全身のバランスをとりながら複雑な動きをリアルタイムで制御することに成功した。

開発には産業技術総合研究所も参加。同日開かれた見学会では、ヒト型ロボットがスケートボードに乗って坂のあるコースを秒速2.6メートルで往復。体を前後に傾けて方向を変え、スラローム走行を披露した。従来の試作機は腰や膝の動きの模倣にとどまっていたが、今回は全身を協調させた制御により、重心移動を伴う高度な技を実現した。

研究チームはスケートボードで滑走する人間の動きを計測してサイバー空間で再現し、AIに繰り返し学習させた。さらに生成AIを使い、現実環境での実験と仮想環境でのシミュレーションを組み合わせることで効率的に学習を進めた。

動作生成の要は「未来予測」だ。サイボーグAIが次の動作を500通り予測し、実際に動くと28時間分に相当する動作の計算を1秒間で完了。その中から最適な動きを逐次選択することで、リアルタイムでの安定した運動を可能にした。

今回の研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がATRに委託し、2020年から進めてきたサイボーグAI開発プロジェクトの一環。

ATR脳情報解析研究所の石井信所長は「今回の技術は介護や高齢者支援、危険な作業現場など、人とロボットが共存する社会での応用にもつながる。将来的にはサイボーグAIと生成AI、脳科学に基づくAIを組み合わせることで、人の心も理解するロボットへ進化させたい」と展望を語った。

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