
【ニューヨーク=清水石珠実】米メディア大手パラマウント・スカイダンスが同業のワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収を検討していることが分かった。米メディアが11日に相次ぎ報じた。世界トップの富豪に躍り出た米オラクル創業者で会長のラリー・エリソン氏が資金援助を行う見通しだ。
パラマウント・スカイダンスは8月、メディア大手のパラマウント・グローバルと米映画制作大手のスカイダンス・メディアが合併して誕生したばかり。エリソン氏の息子、デービッド・エリソン氏が最高経営責任者(CEO)を務める。
WBDは現在、事業を動画配信・映画を担当する会社とケーブルテレビ事業会社の2社に分ける準備を進めている。成長が鈍化するテレビ事業を動画配信など中核事業から切り離すためだ。
だが、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、今回、パラマウント・スカイダンスはWBDの事業の一部ではなく、分割前の全社の買収を狙っているという。現時点では、まだ正式な買収提案は提出されておらず、実現しない可能性もあるという。
メディア業界の中心がインターネットを通じた動画配信に移るなか、米動画配信サービス「ネットフリックス」など資金力の大きなネット大手が存在感を強めている。従来型のメディア企業は、合従連衡を通じて規模を拡大して対抗しようとしている。
メディア大手2社を巡る買収には、米規制当局が競争上の問題を指摘する可能性もある。パラマウント・スカイダンス側は、映画の老舗スタジオ「パラマウント・ピクチャーズ」や報道の名門「CBSニュース」を傘下に抱える。一方で、WBD側は映画大手の「ワーナー・ブラザース」と報道局「CNN」を持つなど、2社は事業が重複する。
ラリー・エリソン氏は10日、米電気自動車(EV)テスラを率いるイーロン・マスク氏を抜いて、世界トップの富豪になった。人工知能(AI)向けクラウド事業が急成長する見通しを示し、創業したオラクルの株価が急騰した。トランプ米大統領とも親しく、米政権の構想に乗って積極的にAI事業を広げる戦略が市場で評価されている。パラマウント・スカイダンスによるWBDの買収計画が実現すると、同氏の影響力がメディア業界にも広がることになる。
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