一橋大大学院の山下英俊准教授(右)が説明するアンケート結果の報告に耳を傾ける町民ら=寿都町で2025年9月13日午後8時9分、森原彩子撮影

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分地選定に向けて北海道寿都町で行われた文献調査に関し、民間の研究グループが13日、町民アンケート調査の結果を公表した。文献調査から次の段階の概要調査へ移行することの是非について、「文献調査まででやめるべき」と答えた人は54%に上った。

 調査の責任者は、一橋大大学院の山下英俊准教授(環境・資源経済学)が務めた。日本で初めて文献調査受け入れを経験した町民の意見を記録し、核のごみを巡るよりよい合意形成のあり方を検討することを目指した。

 アンケートは8月4日に町内の全1291戸に郵送。2人以上で住んでいる場合、誕生日が一番早い成人に回答を依頼した。9月5日までに全世帯の約15%に当たる192戸から回答があった。

 アンケートの設問は、概要調査移行の賛否▽行政などへの信頼度▽文献調査受け入れが地域に与えた影響――など10問。

 調査結果によると、核のごみ問題に「関心がある」「どちらかというと関心がある」と回答したのは計83%に上り、山下准教授は「文献調査に関心を持ち、積極的に意見表明したい人を中心に回答があった」と分析した。

 町が参加している最終処分地選定プロセスについては、「文献調査まででやめるべき」と回答したのは54%。「概要調査に進むべき」は33%、「どちらともいえない」は12%、未回答は1%だった。

 「文献調査まででやめるべき」と回答した人のうち、文献調査を「受け入れるべきではなかった」としたのは91%で、「受け入れるべきだった」は4%だった。

 町内に最終処分の適地はあると思うかという問いには、「ない」「どちらかというとない」と答えた人が計65%に上った。「ある」「どちらかというとある」は計11%だった。

報告会でアンケート結果を解説する一橋大大学院の山下英俊准教授(中央)=寿都町で2025年9月13日午後8時14分、森原彩子撮影

 文献調査受け入れが町の財政に与えた影響については、「良い影響を与えた」「どちらかというと良い影響を与えた」と答えた人が計40%で、半数を切った。

 行政などへの信頼度については、政府を「信頼できない」「どちらかというと信頼できない」と答えた人が66%。最終処分地選定の事業主体・原子力発電環境整備機構(NUMO)は54%、町は52%と信頼度の低さを示す回答が集まった。

 核のごみ問題に関するNUMOの説明に「納得できた」と答えた人は5%にとどまった。

 周辺自治体との関係については、「悪い影響を与えた」「どちらかというと悪い影響を与えた」と答えた人が計59%、町内の人間関係については同回答が計69%を占めた。

 研究グループは13日に町総合文化センターで調査報告会を開催し、自由記述は会場で一部のみ紹介した。調査の受け入れで得られる国からの交付金については「住民にどう還元されたか不透明」「平等に行き渡っていない」と指摘する声があった。政府による主導的役割の不足や原子力政策への不信を指摘する記載もあったという。

 山下准教授はアンケートについて、回答数や属性の偏りを踏まえて「町民の平均的な姿を表しているわけではない」と説明する。

 その上で「(概要調査移行の賛否にかかわらず)町内の適地不在や人間関係の『分断』を指摘する声が見られた点は重く受け止めないといけない」と総括した。

 参加した町民は「実感していたことの多くが数字になったと感じた。政府に問題提起するなど次につなげてほしい」と話した。

 町は概要調査に移行する際、町民に賛否を問う住民投票を予定している。移行時には国が調査地の首長と知事に意向を確認するが、片岡春雄町長は「住民投票の結果に従う」としている。【森原彩子】

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