タブレット端末を使いこなす竹ノ下さん。「お客さまに喜んでもらえることが何よりの幸せ」と笑顔を見せた=神奈川県藤沢市で2025年9月8日午後3時39分、澤圭一郎撮影

 「100歳まで働き続けたい。それが目標です」。大手生命保険会社「日本生命」に勤務する竹ノ下律子さん(87)=神奈川県藤沢市=は、今も顧客を訪ね歩く日々を送る。営業部門で勤続50年。300人以上の顧客を抱え、保険の追加契約や見直しといった手続きを、タブレット端末を駆使しながらこなす。今月の個人契約額は部内トップ。「お客様に助けてもらって今がある。その恩を返すためにも仕事を続けたい」と笑顔で話す。

昼夜問わず重ねた地道な努力

 日本生命湘南支社(藤沢市)に勤務する竹ノ下さんの肩書は藤沢中央営業部の「顧問」だ。3月までは営業部のリーダーだった。65歳で退職し、再雇用で仕事を続けてきた。

 鹿児島県出身。9人きょうだいの5番目に生まれ、24歳で結婚するまで実家の農業を手伝っていた。結婚後も鹿児島で生活をしていたが、4人目の子供が生まれたタイミングで家族で藤沢市に転居してきた。

 「もしも夫に何かがあっても、子供を育てていかれるように」と38歳で日本生命に入社した。見ず知らずの土地で初めての営業職。赤ちゃんをおぶって、飛び込み営業をした。長女を子守役に連れて、夜に訪問営業をしたことも。そんな姿を見て保険を契約してくれた人もいたという。

 「最初の7、8年は泣きながら仕事をしていた」と振り返る。それでも、昼夜を問わず地道な努力を重ねるにつれ、顧客ができてきた。お客さんの悩みを聞いてアドバイスをするなど、親身に寄り添った。竹ノ下さんを指名して保険契約をする人も増えてきた。

変わらない仕事姿勢、上司も信頼

 そのスタイルを変えずに半世紀。今も、午前5時に起きて同9時前に出勤。日中は顧客を3~5軒ほど回る。「高齢のお客さんにおいなりさんを作って持って行くと、とても喜んでくれる」。

 培った信用は仕事に生かされ、40人ほどいる営業部の個人契約で今月は断然トップ。同支社の吉澤知啓・営業部長は「他の社員とは一ケタ違う契約高。何歳になっても成長できることを見せてもらっている。後進の育成もお願いしている」と信頼を寄せる。

 2014年に夫が亡くなり、今は健康や生き方、経営、宗教などのユーチューブ動画を見ては、そのエッセンスを書き出すのが楽しみだという。「お客さまの役に立てる仕事だと思っているので、できるだけ続けたいのです」【澤圭一郎】

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