三菱自動車の人気SUV(スポーツ用多目的車)の「パジェロ」。1982年の発売から約40年にわたって高い人気を誇ったが、同社の収益改善策のため、2021年に惜しまれながら生産終了となった。そのパジェロが近く、復活しそうな気配がある。生産終了からはや4年。かつて、国内の製造拠点だった「パジェロの町」はいまどうなっているのか。

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 岐阜県中南部に位置する人口約8千人の坂祝(さかほぎ)町。「パジェロの町」。そう呼ばれてきた坂祝町に、そのパジェロを生産している工場の閉鎖の知らせが入ったのは20年7月のことだった。

 町内では、三菱自傘下の「パジェロ製造」が1976年から本社と工場を構え、「パジェロ」などをつくってきた。

 ただ、国内外で販売が下火となり、三菱自の構造改革の一環として閉鎖が決定したのだった。

 雇用も税収もパジェロに支えられた町だった。

 コロナ禍前の2018年度には、町の税収全体の16%、法人税に限れば実に34%を同社に頼っていた。

 当時町長だった柴山佳也さん(69)は「町民から『これから町はやっていけるのか』と心配された。未知の不安を抱いた」と話す。

 21年8月に工場が閉まった後、跡地は大手製紙会社が取得した。

 今は物流拠点として使われている。当初予定されていた生産工場は置かれず、従業員は少ない。

 町はふるさと納税の強化などを図っているものの、厳しい財政事情が続く。今年度の予算編成の資料には「歳入を増大させる突破口が見いだせない厳しい状況」と記した。

 工場から響いていたプレス加工の音や、早朝にできていた通勤のマイカーの行列といった風景は、町から消えた。

 柴山さんは「県外の会合でも『パジェロの町から来ました』と紹介すると覚えてもらえたが、もうパジェロの町ではなくなってしまった」と振り返る。

 果たしてパジェロは復活するのか。

 関係者によると、三菱自では、パジェロ復活に向けた検討をしている。ただ、国内に工場を構えて生産することは想定しておらず、東南アジアの工場で新型モデルを生産し、日本に輸入する方法をとる模様だ。

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