世界を舞台に活躍する芸術家が手がけた彫刻の作品が、島根県の出雲大社に9月19日に奉納されました。
八百万の神々が集うとされる境内に展示される作品に込められた、彫刻家の思いを聞きました。
八百万の神々が集う出雲大社、9月19日に参道脇の一角で、約100人を前にお披露目されたのは…高さ2メートルほどの台座の上に設置された石の彫刻「風の環」です。
永遠を意味するメビウスの輪がモチーフになっています。
出雲大社に奉納されました。
制作したのは、画家で彫刻家の武藤順九さん。
イタリアと岡山県津山市を拠点に創作活動を続けています。
「風の環」と題したこの彫刻は、2000年に制作をはじめたシリーズ作品でこれが9作目になります。
画家・彫刻家 武藤順九さん:
出雲の大社様に私のわがままを聞いてもらえたのが最高ですね。
「作家のわがまま」だという武藤さん、この作品を出雲大社に展示するのには、ある強い思いがありました。
52年前にイタリアに渡り、創作活動を続けてきた武藤さんは、今から25年前の2000年、人間の無意識の中にある無限と自由をイメージして「風の環」の最初の作品を制作。
カトリックの本拠地・バチカン市国に展示されました。
この時、武藤さんは当時のローマ教皇、ヨハネ・パウロ二世に拝謁。
この評価を受けて「風の環」はその後、仏教の聖地・インドのブッダガヤ、アメリカ先住民の聖地・デビルズタワーなどにも展示されました。
また2011年に発生した東日本大震災の被災地にも慰霊碑として置かれるなど、これまでに平和の願いを込め、世界の8か所に作品が納められています。
その9作目は、「風の環」シリーズの完結作として、出雲大社に置かれました。
これまでは請われるままに作品を納めてきましたが、集大成ともいえるこの作品は、武藤さん自らがこの地に置きたいと願ってきました。
画家・彫刻家 武藤順九さん:
平和の和の心を、このお国譲りをなさった、出雲の大社様から世界に伝えられたらと思っています。
52年間イタリアを拠点に暮らす中で、武藤さんは世界の現実を知り、祖国・日本のすばらしさを痛感したといいます。
画家・彫刻家 武藤順九さん:
すべての宗教に文句を言わない民族は、日本人だけですよ。八百万の神だから、人種差別がない日本人は。こんな民族いませんよ、世界の鏡になる民族なんです。
出雲大社から日本人が持つ和の心を世界の人々に伝え、平和を発信したいと考えています。
今回、出雲大社に置かれた彫刻は、東日本大震災の慰霊碑の3分の1の大きさ。
宮城県仙台市出身の武藤さんは、この震災で親族や友人10人を亡くし、1人は今も行方がわからないままです。
被災地を訪れ、瓦礫のなかから芽吹く若葉を見て、鎮魂の祈りをこの形に託したといいます。
画家・彫刻家 武藤順九さん:
愛情・平和、誰だって幸せになりたい。どんな世界の人だって。世代を超えて、100年、200年、1000年でもこの日本から発せられたメッセージを彫刻が担ってくれたらうれしいなと思います。
風の環シリーズは一旦完結ですが、武藤さんの創作活動は続きます。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。