
【ワシントン=芦塚智子、ヒューストン=赤木俊介】トランプ米大統領は22日、「タイレノール」をはじめとする鎮痛解熱剤の有効成分であるアセトアミノフェンを妊娠中に使用すると子供の自閉症のリスクを大きく高める可能性があると発表した。米食品医薬品局(FDA)は医療的に必要な場合を除いて妊婦は服用を控えるよう強く勧告する方針とみられる。
アセトアミノフェン、日本の市販薬にも使用
自閉症については定義の拡大や遺伝、環境など複雑な複合要因があるとの見方が一般的だ。鎮痛剤のみを名指しする政権の方針には懐疑的な見方がある。
トランプ氏はホワイトハウスでの記者会見で、自閉症と診断される子供は以前は2万人に1人程度だったが、現在では31人に1人に急増していると指摘。「何か人工的なものがある」と語った。「タイレノールはよくない」「よほどの高熱で耐えられないような場合以外、タイレノールは服用するな」と強調した。
発表を前にした報道を受け、タイレノールを扱う米ケンビューの22日の株価は前週末比7%下げた。
ケンビューの広報担当者は声明で「独立した、しっかりした科学はアセトアミノフェンの服用が自閉症を起こすことはないと明確に示していると考えている」と反論。「それ以外のいかなる指摘にも強く反対し、それが妊婦に与える健康上のリスクを深く懸念する」と訴えた。
米産婦人科学会はアセトアミノフェンを医師との相談のうえで妊娠中に安全に使用できる市販鎮痛剤の1つとして紹介する。2005年の調査では米妊婦の65%が妊娠中に使用していた。アセトアミノフェンは解熱剤など日本の一般用医薬品にも使われている。
自閉症の診断基準変更、増加の一因か
妊娠中のアセトアミノフェンの使用と出生児の自閉症の因果関係については、研究者の間でコンセンサスができていない。
トランプ氏は21日、銃撃され死亡した保守活動家チャーリー・カーク氏の追悼式で「明日、医療関係で米国史上最も大きな発表の一つをする」「自閉症への答えを発見したと思う」と予告していた。
米疾病対策センター(CDC)が4月に発表したデータによると、2022年に米国で自閉症と診断された8歳の子供の割合は31人に1人で、2000年の150人に1人から大幅に増えた。
ケネディ厚生長官は「自閉症の蔓延が深刻化している」「防げる病だ。環境的要因が存在するとわかっている」などと主張してきた。
ただ、米国での自閉症の診断基準と分類は13年に変更されており、22年調査では早期診断プログラムがある地域で特に診断が多かった。こうした要素が診断数の増加に影響した可能性を指摘する声もある。
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