洪水被害の軽減や地下水保全など多面的な機能を持つ『雨庭』の話題。球磨郡あさぎり町で21日、造園のプロに教わりながら『雨庭』をつくるイベントがありました。
【錦町から参加】
「雨庭は身近で誰もができる。家庭でできるのがとてもいいなと。今の時代に必要なのかなと」
9月21日、あさぎり町で開かれた『雨庭』のワークショップ。交流施設『リュウキンカの郷』にある庭園を今回、造園のプロと一緒に『雨庭』へと造りかえました。
『雨庭』は、屋根などに降った雨を水路に直接流さず浅いくぼ地に一時的にため、地中に浸透させる植栽空間です。
河川に雨水が一気に流れ込むのを抑え、洪水を防ぐことができるほか、地下水保全にも効果があるとされています。
2020年の7月豪雨をきっかけに、熊本県立大学や肥後銀行など産学官でつくる『くまもと雨庭パートナーシップ』が県内での普及に取り組んでいます。
【ハビタ 滝澤 恭平 代表取締役】
「基本的には雨どいから水を導いて庭にしみ込ませるだけの話だが、それが結果的に治水や地域の安全にもつながっているところが、他にはない取り組みなのでそこが魅力的だなと」
今回、関東で『雨庭』を含むグリーンインフラの普及に取り組むハビタの滝澤さんが監修。熊本県造園建設業協会の熊本グリーンインフラ研究会のメンバーがボランティアで施工しました。
『リュウキンカの郷』の庭園は元々、水を用いない枯山水の様式。それを『雨庭』へと造りかえるため、砂利の下に敷かれていたモルタルをはがし、地中に水が染み込みやすくする工夫を施しました。
【熊本県造園建設業協会 山口 靖久 副会長】
「あさぎり町のコンポスト、生活堆肥と牛ふん堆肥を混ぜたものを土壌改良剤として使っている」
改良した土壌の上には水はけのバランスを整えるボラ土を敷き詰めました。
【栗原造園 栗原 薫 さん】
「よりスピーディーに垂直に雨水が入っていくようなイメージ」
ワークショップでは埼玉で造園業を営む栗原さん夫妻が地中深くに雨水を浸透させるための方法を解説。参加者が、焼き杭を打った地中に砕石や落ち葉、竹炭を重ね、水や空気の通り道をつくるやり方を学びました。
【錦町から参加】
「個人でできることは限られているが何かせずにはいられないという気持ちで参加した」
【栗原造園 栗原 薫 さん】
「雨庭の魅力は、決まりがなくて自由にできるというところだと思うので、できるところから始めて雨を楽しんでほしい」
また、この日は、『雨庭』づくりに先立ち勉強会も開かれました。
【オシンテック 小田 真人 代表取締役】
「この雨庭は、世界的にみても本当にど真ん中、最先端なんだという話をきょうはしたい。日本で〈雨庭〉をやっているのは、ここ熊本。熊本がリードしていると思う」
世界各国や国連などが発信している情報を一元化したウェブツールを開発した〈オシンテック〉の小田 真人 代表取締役がアメリカやイギリスなどで普及が進む『雨庭』を紹介。「市民が主体となって楽しみながら地域の防災にもつなげる」。それが〈雨庭〉の普及のポイントだと話しました。
【オシンテック 小田 真人 代表取締役】
「〈防災は産業になる〉つまり気候変動の時代、人々が求める困りごとは防災になっていかざるを得ない。そうしたときに、この熊本の〈雨庭〉は先端にある。人々が求めるモデルを今形作ろうとしている」
徐々に浸透しつつある熊本の『雨庭』。気候変動に適応するツールとして世界をリードする可能性を秘めています。
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