日本にはアフリカ諸国との協力の蓄積がある(8月の第9回アフリカ開発会議)

アフリカとの交流促進を目指した国際協力機構(JICA)のホームタウン事業が撤回に追い込まれた。SNSで移民促進策との誤情報が広がり、抗議が相次いだ末、白紙に戻されたのは残念だ。

アフリカは若者が多く、成長の可能性に満ちている。多国間協調のうえでも、関係を強める意義は大きい。目配りを怠らず、草の根の協力を粘り強く続けてほしい。

JICAは8月のアフリカ開発会議(TICAD)に合わせて、千葉県木更津市など4市をアフリカの国との交流を目的に「ホームタウン」に認定した。しかし移住受け入れを促進する政策との誤った情報がネット上で拡散した。抗議や問い合わせが自治体に殺到し、過大な負担がかかっていた。

ナイジェリア政府が日本が特別ビザ(査証)をつくると誤った発信をしたことも響いた。JICAがどこまで意思疎通、チェックできていたのか疑問だ。

JICAや外務省は事実関係を説明し、誤解を正そうとした。しかしSNSを多用する層に、効果的な手段で迅速に正しい情報を届けたとはいえまい。苦い教訓を残した。

相次いだ抗議に、外国人への過度の拒否感がちらつくのも心配だ。外国人受け入れが関心を集めるなか、他者を排除するうねりがネット上で無責任にできてしまうことを危惧する。

アフリカへの偏見や差別を助長するような誤った言説は許されない。国を閉ざしても、日本にプラスになるわけではない。

今回の事業の対象となった各自治体には、それぞれアフリカとの交流の積み重ねがある。一連の騒動に関係者は落胆しただろう。アフリカ側にはどう映るか。後味の悪さが否めない。

JICAの田中明彦理事長は記者会見で「今後も国際交流を促進する取り組みを支援していく」と述べ、日本が信頼を得るための長期的な投資だと強調した。アフリカに友人を増やす官民の地道な努力を支持したい。

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