
国立がん研究センターなどは、肝臓に転移がある大腸がん患者で、抗がん剤などの治療によって画像上はがんが消失したように見えるケースでも、がん細胞が残っている可能性があるという研究結果を発表した。日米欧の国際共同研究で明らかになった。画像診断で消失したように見えるがん細胞に対して、改めて切除手術を行うべきかどうかを慎重に検討する必要がある。
大腸がんは日本や欧州で患者数が多い。転移する可能性が高い臓器は肝臓で、初診時の大腸がん患者の10〜25%に転移がみられる。肝臓に転移したがんの手術は難しく、患者の負担も大きい。
抗がん剤などの薬物療法後にコンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などの画像で見たところ、がん細胞が消失するケースがある。この場合、残っているがん細胞があるとして、改めて切除手術するかどうかは専門家の間でも意見が分かれていた。
がんの専門医でつくる日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は欧州がん研究機関(EORTC)と共同で、肝臓に転移がある大腸がん患者で、切除が難しい転移があるケースの約230人に対して画像診断の有用性を評価した。CTとMRIによる画像で消失したと判断した事例と、術後の診断の一致率は約62%だった。
研究に参加した兵庫医科大学の片岡幸三氏は「画像診断で病変が消えていても、実際には残っていることを踏まえて手術の計画を立てることが重要だ。負担の大きい肝臓の手術は患者の体力なども考慮して検討する必要がある」と指摘する。
研究成果をまとめた論文は医学誌「JAMA Surgery」に掲載された。
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