イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから7日で2年が経った。パレスチナ自治区ガザでの死者は6万7千人を超え、多くの住民が家を追われ飢餓に苦しんでいる。間もなく閉幕する大阪・関西万博で、パレスチナは何を伝えてきたのか。
- 万博が映す、「いのち」が奪われる世界 知ることが未来につながれば
「私たちは悲劇を語るためだけにここに来たのではない。忍耐と回復力、そして希望を語るために来た」。6月にあったナショナルデーのセレモニーで、政府の代表、ムハンマド・アムール国民経済大臣が力強く語りかけた。
スピーチが終わると、会場に入りきらなかった聴衆から大きな拍手が起き、「フリーパレスタイン(パレスチナに自由を)」という声があがった。
複数の国が入る「コモンズD」の一番奥に、パレスチナのパビリオンはある。金色に輝くモスクや色鮮やかな野菜が並ぶ食卓の写真、カラフルな手描きの花模様の陶磁器――。伝統工芸品や写真、動画を通じて、人々の生活や文化、歴史を伝えた。
「印象をポジティブに変えたかった」
パビリオン責任者のラファト・ライヤーンさんは「みなさんがパレスチナに対して持っているのは戦争や虐殺、飢餓などのネガティブな印象ばかり。万博でパレスチナのいい側面を示すことで、その印象をポジティブなものに変えたかった」と話す。
一方で、万博会期中にパレスチナの状況が悪化の一途をたどったのも事実だ。多くの来場者が「いま何が起きているのか、いつ終わるのか」と質問を投げかけたという。その都度、歴史的な背景や、占領や戦闘の現状を丁寧に説明してきた。
万博会場内のインスタレーション「文明の森」のオークの木の下に9月、「Palestine(パレスチナ)」と書かれたQRコードが設置された。スマートフォンで読み込むと約2分半の音声が流れる。
「私たちは自由と平和を希求し、自らの土地とアイデンティティーへの権利を守り抜き、他のすべての人々と同じように尊厳、正義、人間性を持って生きることを夢見ています」。世界の人たちに向けたパレスチナからのメッセージだ。
来場者も早期解決を願う
7日も多くの来場者がパビリオンを訪れ、写真を撮ったり、スタッフの話に耳を傾けたりしていた。岐阜県多治見市から来た元教員の伊藤芳博さん(66)は過去に2度パレスチナを訪れたことがあるといい、パビリオンを見て「豊かな自然や文化がある国が今こんなことになっているとわかる展示だった」と話す。「毎日人の命が失われているのは異常だ」と早期解決を願っていた。
9月末、アメリカが新たな和平案を示し、停戦をめぐってイスラエルとハマスの交渉が続けられている。
ライヤーンさんは話す。「すぐに戦闘が終わってほしい。もっと早く終わっていればこんなに犠牲者は出なかった。私たちはずっと平和を求め続けている」
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