トランプ米大統領はガザの和平へ両当事者に集中的に圧力をかけた(8日、米ホワイトハウス)=AP

イスラエルとイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザを巡る和平計画の「第1段階」で合意した。戦闘が2年を超したガザの和平を目指す第一歩として、双方は確実に履行してほしい。

合意を発表したトランプ米大統領は、ガザで拘束中の人質全員が解放され、イスラエル軍が部分的にガザから撤退すると強調した。

2023年からの戦闘でガザでの死者は6万7千人を超え、飢饉(ききん)など人道危機が深刻だ。人質と家族の苦しみも、察するに余りある。双方に希望を与える合意の成立は前進だ。

トランプ氏は「恒久的な和平に向けた一歩だ」と自賛した。政権2期目の外交成果となる。

今回の合意は、トランプ氏が20項目の和平計画をつくり、集中的に働きかけたことが奏功した。イスラエルのネタニヤフ首相と9月末に会談し、受け入れさせた。遅きに失したとはいえ、強い圧力をかけたのが効いた。

ハマスと関係の深いイスラム諸国に根回しし、計画への同意を取り付けた周到さも評価したい。ハマスは孤立の回避へ人質解放に応じざるを得なくなった。

さらに今週のエジプトでの間接交渉に、第1次政権で中東政策を主導した娘婿クシュナー氏を派遣し、真剣さを示した。自らも妥結を急がせる発言を繰り返した。

過去に合意が破られた例もあり予断を許さない。ハマスは人質を交渉カードに使い、イスラエルは撤収を拒んできた経緯がある。

この合意が守られても、全面決着ではない。今後の協議が行き詰まる懸念がある。ハマスの武装解除やイスラエル軍の完全撤退はなお難題とみられ、ガザの戦後統治も見通せない。また膠着し、イスラエルが攻撃を再開する事態は防がなくてはならない。

トランプ氏は第1段階にとどまらせず、双方が次の段階の協議に進み恒久停戦に至るまで影響力を行使してほしい。日本を含む国際社会は、こうした仲介国の努力を支持し続ける必要がある。

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