ノースカロライナ州下院のホール議長(左)=AP

【ワシントン=芦塚智子】米南部ノースカロライナ州州議会の共和党指導部は13日、トランプ大統領の意向を受けて連邦議会下院の選挙区割りを変更する考えを表明した。実現すれば共和優位の選挙区が1つ増えることになる。2026年の中間選挙に向けて自党に有利な選挙区を増やそうとする「ゲリマンダー」の戦いが拡大している。

区割り変更、30年予定を前倒し

同州下院のホール議長(共和党)は声明で「我々は大統領を支持し、(連邦議会下院での)共和党の多数派を守り、追加の共和議席を確保する」と述べた。

民主党に有利な区割り変更を目指している西部カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主)を名指しし「ノースカロライナはニューサムのような過激な民主党員が区割りを変更し、(トランプ氏を選んだ)国民の意思を損なうことを許さない」と強調した。

ノースカロライナ州議会は共和が多数派を占めている。スタイン知事は民主だが、同州では知事に区割りに関する拒否権がない。変更が実現する公算が大きい。共和は現在、同州の下院議席14のうち10を占めているが、1議席上積みの可能性が高まる。

スタイン氏は声明で「州議会はドナルド・トランプのためでなく、ノースカロライナのために働くものだ」と区割り変更の動きを非難した。

米下院選挙区の区割りは通常、10年ごとの国勢調査を受けて更新する。次の区割り変更は30年の国勢調査後のはずだった。しかし中間選挙で共和の僅差の多数派を死守するため、トランプ氏が共和地盤の各州に早急な区割り変更を求めた。

民主優位のカリフォルニアも計画

まず南部テキサス州のアボット知事(共和)が8月、民主の抵抗を押し切って区割り変更を強行。共和優勢の選挙区を5つ増やした。中西部ミズーリ州のキーホー知事(共和)も共和優勢区を1つ増やす区割り案を提案し、9月末に成立した。

これに対抗してカリフォルニア州のニューサム氏が民主に有利な選挙区を5つ増やす案を推進。同州での区割り権限は独立委員会が持つため、一時的に権限を民主主導の州議会に戻すことを認める住民投票を11月に実施する。

米メディアによると、共和は中西部インディアナや南部フロリダなどの州でも共和に有利な区割り変更を検討している。民主は中西部イリノイや東部ニューヨーク、メリーランドなどの州で対抗する構えをみせている。

米国の下院選挙は1選挙区から1人を選ぶ単純小選挙区制で、区割り次第で勢力が大きく変わる。特に現下院は共和と民主の議席差が6と小差のため、ゲリマンダーによる数議席の増減が多数派を決定しかねない。

最高裁、党利目的の区割り変更を容認

米国の憲法は連邦議会選の実施方法を決める権限を州議会に与えている。このため、大半の州で選挙区の区割りは州議会が決める。

米連邦最高裁は2019年、党派によるゲリマンダーの是非は政治的な問題であり、連邦裁判所の管轄外との判断を下した。党を有利にするためのゲリマンダーに事実上のお墨付きを与えた。

一方で特定の人種が多い地域を分割するなどして影響力を薄めるゲリマンダーについては、人種差別を禁じた「投票権法」に違反するとして一定の歯止めをかけている。

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