
【ソウル=小林恵理香】国際原子力機関(IAEA)は18日、北朝鮮の安全保障に関する報告書をまとめた。北西部の寧辺(ニョンビョン)でウラン濃縮施設とみられる建物が新設されていると指摘した。北朝鮮の核・ミサイル開発の動向に深刻な懸念を表明した。
IAEAが過去1年間の衛星写真と関連情報を分析したところ、寧辺で2024年12月にウラン濃縮施設とみられる建物の新設工事がはじまったという。25年5月時点では外観は完成したものの、建物内部の関連インフラなどは整備を続けているとの見方を示した。
北朝鮮北東部・豊渓里(プンゲリ)にある核実験場については、大きな活動の兆候は見られなかったが「核実験を実施できる状態を保っている」と記した。米国との非核化交渉で18年に同実験場を閉鎖したあと、内部の復旧作業を進めていた。
ウラン濃縮施設は遠心分離機でウランを高速回転させ、核兵器に必要な高濃縮ウランを生産する施設だ。10年に寧辺の核施設を訪問した米国の核物理学者、ジークフリート・ヘッカー氏が当時2000基の遠心分離機が稼働していたと明かしている。
北朝鮮は寧辺に加え平壌近郊の降仙(カンソン)にもウラン濃縮施設を保持しているとされる。寧辺の核施設でプルトニウムや高濃縮ウランを生産し、06〜17年には計6回の核実験を断行した。
北朝鮮は核戦力の拡大に意欲を見せる。24年9月に金正恩(キム・ジョンウン)総書記がウラン濃縮施設を視察する様子を初めて公開した。濃縮に使う遠心分離機の台数を増やす方針を示し、兵器向けの核物質生産を強化すると強調した。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、24年時点の北朝鮮の核弾頭保有数は前年比20発増の50発だった。IAEAは今回の報告書をもとに9月にも開く年次総会で北朝鮮による核開発についても議論する見通しだ。
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