カンボジアの詐欺拠点 “情報提供” で明らかに
詐欺拠点の実態は
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逮捕の男女29人 10代と20代の若者が半数以上
相次ぐ 海外拠点の特殊詐欺グループの摘発と日本人の検挙
日本人29人が拘束されたカンボジアの詐欺拠点は、この拠点から帰国した愛知県の男性からの情報提供で明らかになりました。捜査関係者によりますと、男性は去年12月、大手求人サイトのアルバイトに応募したところ、名古屋駅で「担当者」を名乗る人物と待ち合わせることになったということです。そして数日後、この人物とともに関西空港に向かい、タイに向かう航空機に乗るよう指示されたということです。男性は、タイから陸路でカンボジアに入国し、拠点の施設に到着しますが、特殊詐欺の電話をかける「かけ子」などの犯罪行為には加担せず、ことし1月に帰国しました。愛知県警は、男性から施設を撮影した写真など、詐欺拠点の実態について情報提供を受け、外務省などを通じて現地の捜査当局と連携し捜査を進めたということです。そしてことし5月、現地の捜査当局が拠点の施設を捜索し、日本人29人を拘束したほか、スマートフォンやパソコン、警察官の制服のようなものなどを押収していました。
詐欺拠点はタイとの国境に近いカンボジア北西部の都市ポイペトにあり、複数の建物が塀に囲まれ、周囲を警備員が警戒していたということです。捜査関係者によりますと、愛知県の男性の説明では、日本人は「事務所」と呼ばれる部屋で特殊詐欺のうその電話をかける「かけ子」をしていたといいます。そして、中国語を話す8人ほどの人物が拠点を管理し、日本人の様子を別の部屋からモニターで監視していたということです。拠点の外から、うその電話をかける「事務所」や日本人の居住スペースに向かうには、3つの門を通らなければならないなど、厳重に管理されていたということです。拠点では毎日3食が提供されていたほか、コンビニエンスストアのような店舗もあり、拠点の敷地内であれば自由に行動できたということです。
捜査関係者によりますと、逮捕されたのは10代から50代の日本人の男女29人で、10代と20代の若者が半数以上を占めているということです。知人などによりますと、このうち19歳の男の容疑者は、新宿 歌舞伎町の通称「トー横」周辺のエリアをよく訪れていて、日常的に金に困っている様子だったということです。容疑者の知人だという20代の女性は「ギャンブルをやったり変な男たちとつるんだりしていた。昔からお金に困っていて、金銭のトラブルも聞いたことがある。野宿とかもしていて、いろいろと生活に困っていたようだ」と話していました。同じくこの容疑者の知人だという18歳の男性は「詐欺しているみたいなことを言っていて、何の詐欺と聞いたらオレオレ詐欺とか言っていた」と話していたほか、21歳の男性は「一時期、金に困っていたけど、最後に会ったときはめちゃくちゃ金を持っていて、ブランド品を身につけていた。詐欺をやっているようなことを話していたので、『やめた方がいいよ』と言ったが、『捕まんなきゃ大丈夫でしょ』といって続けていたようだ」と話していました。また、別の35歳の男の容疑者について近所に住んでいたという女性は「2年くらい前に荷物を置いたまま、いなくなったと聞いた。ポストからは督促状などの郵便物があふれ出ていた。その後、不動産業者が家具などを部屋の外に運び出すなどして、掃除しているのを見た」と話していました。
日本国内の特殊詐欺の被害は深刻な状況が続いています。警察庁によりますと、去年1年間の特殊詐欺の被害は2万1043件、被害額は過去最多となる718億円余りにのぼっています。ことしに入っても、6月までに被害は1万3213件、被害額は597億円余りとなっていて、過去最多となった去年を上回るペースで増加しています。そして、今回のように、海外を拠点にした特殊詐欺グループの摘発と日本人の検挙も近年、相次いでいます。2019年以降、カンボジア、フィリピン、タイ、ベトナムで摘発が相次ぎ、ことしはミャンマーの、タイとの国境近くにある拠点で、警察官などをかたってうその電話をかけて現金をだまし取ったとして、日本人が検挙されました。海外の拠点で詐欺事件に関与したとして検挙された日本人は、おととしは69人、去年は50人にのぼっています。捜査関係者によりますと、2010年代後半にかけて日本国内の特殊詐欺グループの拠点の摘発が続いたことで、中央政府の統治が及ばない地域があり、日本と時差が少なく、情報通信網が発達していて不自由なく通信できる東南アジアに、グループが拠点を置くようになったと考えられるということです。深刻な状況が続くなか、8月、警察庁の幹部がフィリピンとマレーシアを相次いで訪問。現地当局との協議に臨み、犯罪の拠点を摘発するための情報交換をさらに進める方針を確認したということです。警察当局は、日本の犯罪グループが「闇バイト」に応募した人物などを海外に渡航させて、特殊詐欺に関わらせているとみて、海外の捜査機関と情報を共有するなど、連携を強化するとともに、グループ中枢の人物の検挙につなげたいとしています。
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