対談するフィナンシャル・タイムズのルーラ・カラフ編集長(22日、東京都千代田区)

日本経済新聞社とフィナンシャル・タイムズ(FT)は22日、両社のパートナーシップ10周年を記念したシンポジウム「The Great Dialogue」を都内で開催した。2部構成の第2部では「人工知能(AI)とフェイクニュースの時代にジャーナリズムが果たす使命とは」をテーマにFTのルーラ・カラフ編集長と日経の山崎浩志編集局長が意見を交わした。(敬称略)

山崎 AIで取材手法も変化する一方、フェイクニュースなど新たな問題も生じる。AIをどのように扱うべきか。

カラフ 読者が求める人間によるジャーナリズムへの期待と、我々自身の革新者としての欲求とのバランスを常に取らなければならない。取り組みの大半はジャーナリストがより効果的で質の高い報道を生み出せるよう支援することにある。単なる複製ではなく、記者やニュース編集者に対するアシスタントとしての役割を重視している。

山崎 日経は人の手が必要な記事の要約やプレスリリースの確認といった作業にAIを取り入れて効率化した。

カラフ AIを用いたニュース編集の初期段階では編集者への負担増となるだろう。しかし、時間の経過とともに編集局全体で活用できるようになれば時間の節約につながり、ワークフローの一部となるはずだ。

山崎 AIでジャーナリズムを高度化する取り組みについて。日経では東京都調布市の道路陥没事故をAIで分析した。

カラフ ジャーナリストとAIエンジニアを同じチームに配置した。データを分析しなければ手が届かない記事が数多く存在するからだ。この取り組みによって従来では到底書けなかったようなストーリーを発掘することに成功している。

山崎 メディアにとって民意を知ることは死活問題だ。AIを使って幅広い民意を収集・分析する「ブロードリスニング」などで課題を解決しコンテンツに役立てたい。

カラフ 伝統的なメディアは現在、おそらくかつての半分しか読まれていない。AIが競争や機会をもたらすのと同時に、メディア環境そのものが変化している。イノベーションや未来を考える上で、この環境にも対処しなければならない。

山崎 日経もFTも責任ある報道は人が担うという看板を掲げる。

カラフ 我々は技術や革新に対して背を向けるのではなく受け入れるべきだ。ジャーナリズムの未来について私は楽観的だ。読者との関係は信頼に基づいており、AIはその信頼を代替できない。AIは歴史の目撃者にはなれない。AIは報道できず、語れず、感じられず、見ることができない。

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