ロシアの原子力潜水艦(7月、アルハンゲリスク州セベロドビンスク)=スプートニク・ロイター

ロシア軍がNEC製の海底通信ケーブルを軍事転用した疑いがあることが23日、分かった。キプロスの民間企業を通じて調達した製品を、核ミサイル搭載の原子力潜水艦を守るため、敵国艦船を探る北極圏バレンツ海の海中監視網「ハーモニー」の構築に使ったもようだ。

海底ケーブルの輸出には日本政府の許可が必要で、最終需要者や使用目的が実際と違う場合は外為法に抵触する。経済産業省がNECに外為法に基づく行政処分や行政指導に踏み切る可能性がある。

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した文書や、共同通信や米ワシントン・ポスト、南ドイツ新聞など10社による取材で日米欧にまたがる調達網が判明した。NECは2018年にキプロスの企業に海底ケーブルを売却した事実を認めた上で「軍事利用されるとは考えていなかった」と説明した。

ICIJが入手したキプロスの会計事務所の文書や関係者によると、NECはロシア国防省に近いキプロスの企業「モストレロ・コマーシャル」に対し、18年に海底ケーブル750キロメートルを売却した。

モストレロは、ロシア国防省と取引がある在モスクワの通信インフラ企業パースペクティブ・テクノロジーズ(UPT)と所有者が同じで、秘密調達を担うペーパーカンパニーだった。米財務省はロシアによるウクライナ侵略後の24年10月、両社を制裁リストに追加した。

モストレロが18年1月、NECから購入した海底ケーブルをNECの子会社OCCの事業所(北九州市)から貨物船に積んだことを共同通信が書類や船舶の位置情報、関係者の話などで確認。モストレロの銀行明細や監査関連文書によると、NECは17〜18年に計約1400万ドル(約22億円)を受け取った。〔共同〕

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