
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が31日に韓国南東部・慶州(キョンジュ)で開幕する。世界がトランプ米政権の関税政策に翻弄されるなか、加盟国・地域は経済協力や自由で開かれた貿易・投資について話し合う。
APEC首脳会議は1993年に米シアトルで初めて開催した。発足当初は12カ国だったが、現在は米国や日本をはじめ中国、ロシア、韓国、オーストラリア、カナダ、ベトナム、メキシコなど21カ国・地域が加盟する。
APEC加盟国・地域の人口は世界の3割、国内総生産(GDP)の合計は世界のGDPの約6割を占める。貿易量も全世界の5割ほどにあたり、巨大な経済圏だ。

2025年1月に就いたトランプ米大統領は各国に相互関税を課し、世界経済を揺さぶった。中国とは報復関税の応酬で対立を深める。APECの開催地である韓国も、米国との品目別関税を巡る交渉が決着していない。
APEC首脳会議では加盟国・地域が結束し、自由で開かれた貿易環境を堅持することの必要性を確認できるかが焦点となる。ただ、保護主義的な政策を強める肝心のトランプ氏は、会議そのものには出席しない公算が大きい。
トランプ氏は27〜29日に日本を訪れた後、慶州に向かう。韓国大統領府によると、トランプ氏の韓国滞在は29〜30日の予定だ。最高経営責任者(CEO)サミットなどの一部行事に参加し、会議の開幕日である31日を待たずして帰国の途に就くとみられる。
APECはアジア太平洋地域の首脳が一堂に会するため、2国間の首脳会談も数多く開かれる。注目されるのは30日に決まったトランプ氏と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の会談だ。第2次トランプ政権発足後で初めてとなる。
トランプ氏は中国によるレアアース(希土類)規制に100%の追加関税案で対抗する方針を示し、関係悪化への懸念が強まっている。米中は台湾問題を含めて多くの課題を抱えており、首脳間の対話は世界経済や周辺国の安全保障に影響を与える。
就任したばかりの日本の高市早苗首相も慶州を訪れる。韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領との初会談を予定する。高市氏は韓国内で警戒のまなざしを向けられている。メディアは過去に閣僚として靖国神社を参拝し、外国人政策を掲げる高市氏を「強硬保守」と呼ぶ。首脳同士の初対面が韓国側に与える印象は重要となる。
トランプ氏は25年内の米朝首脳会談の実現にも意欲をみせていた。米メディアはトランプ政権が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記との会談を調整するため、非公式に北朝鮮側と接触したとも伝えていた。
金正恩氏は北朝鮮が「核保有国」であることを認め、非核化の要求を放棄することが会談の条件だと主張する。双方にとって利益が見いだしにくく、米政府高官は会談の予定はないとしている。
韓国南東部に位置する慶州は、紀元前57年から西暦935年まで約1000年間続いた新羅時代の首都だった。日本の京都に例えられる歴史的文化都市で、古墳群や寺院、世界遺産などが点在する。

慶州市は期間中に国内外の2万人以上が訪問するとみて、宿泊可能なホテルの部屋を1日最大7700室確保した。12のホテル・リゾート施設に防弾ガラスや盗聴を防ぐ装置を備えた「大統領スイート」と呼ぶ部屋も準備した。
韓国メディアによると、およそ6000人の機動隊を慶州と釜山に配置する。周辺住民は市街の美化運動をするなど総出で各国首脳を迎える準備を進めている。
(ソウル=小林恵理香)
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