英国・北アイルランドのロンドンデリーで1972年1月、英軍がカトリック系のデモ隊の市民に発砲して13人が死亡した「血の日曜日事件」で、ベルファストの裁判所は、殺人の罪などに問われた元英陸軍落下傘連隊の兵士について無罪判決を言い渡した。遺族らからは「正義はもたらされていない」などと非難や落胆の声があがっている。英BBCなどが報じた。

 英国の統治を望むプロテスタント系住民と、アイルランドとの統一を求めるカトリック系住民との間で30年余り続いた北アイルランド紛争のなかでも、象徴的な事件とされる。公民権デモに参加していたカトリック系住民に落下傘連隊の兵士らが発砲して13人が死亡し、紛争拡大のきっかけとなった。

 BBCなどによると、匿名で「兵士F」と呼ばれている退役軍人は二つの殺人と五つの殺人未遂の罪に問われた。発砲事件で訴追された唯一の退役軍人で、これまで無罪を主張していたという。

 23日の判決は、当時の落下傘連隊が逃げる非武装の市民らに発砲したとし「合法的な自己防衛ではなく、軍の規律を失っていた」と指摘した。一方で、事件を立証する上で根拠となった別の兵士らの供述などが、「兵士F」を有罪にする証拠としては不十分だったと判断したとみられる。

 遺族らは、誰も罰せられなかったことは「英国に責任がある」などと訴えている。

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