中海・宍道湖・大山圏域の市長や山陰両県の企業経営者などが、10月にインドを訪問しました。
訪問の主な目的は、インド南部にあるケララ州との経済交流拡大に向けた連携強化です。
視察団にはTSKの記者が同行し、現地での交流の成果、山陰の経済波及効果の可能性などを取材しました。

4日は、2025年ですでに3000万人を超え、右肩上がりの成長が続く訪日外国人。
インドを足掛かりに「インバウンド」観光の流れを呼び込む取り組みに注目します。

宗教、言語、歴史…多種多様な文化が入り混じるインド。
人口は約14億4000万人で、2023年には、中国を抜き世界一に。
経済成長率も6.5%と世界トップクラス。
その巨大な市場に世界が注目しています。

杉谷紡生記者:
インドの首都、デリーの観光地、インド門です。人口も文化も日本とは全く違うこの国で、山陰の自治体や企業が新たなビジネスチャンスを探しています。

島根・鳥取両県の企業・団体でつくる「山陰インド協会」と中海・宍道湖・大山圏域の市長会と経済団体は、10月中旬から約1週間、インドを訪問しました。

「山陰インド協会」は2013年に設立。
経済交流拡大に向けて、中海・宍道湖・大山圏域の行政・経済団体とともにインドを訪れ、現地を視察しています。

10回目の訪問となる今回は、過去最大規模の52人が参加しました。
訪問団はまず首都・デリーを訪問、インド駐在の小野啓一大使と面会しました。

駐インド日本大使館・小野啓一大使:
(人口が)過去十年でこれだけ減っているわけですから。と、いう中で誰と組んでどうやって自分たちの糧とするのかというのを考えたときにやっぱりインドというのは大きな選択肢だよなと。

中海・宍道湖・大山圏域市長会・上定昭仁会長:
国内でこれだけインドとの交流を盛んにしている地方都市はないと言っていただけるように圏域で取り組んでいきたい。

つづいて訪問団が向かったのは、「目的地」のインド南部ケララ州です。

今回の訪問の最大の目的は、ケララ州の政府や地元の商工団体「INJACK」印日商工会ケララとの間で2015年に交わされた経済交流に関する覚書の再調印です。
改めて関係を強化、IT、観光、医療など9つの分野で連携することなどが覚書に盛り込まれました。

中海・宍道湖・大山ブロック経済協議会:田部長右衛門会長:
日本に工場を建設したいというお話を伺ったので、それならぜひMOUを締結したので、山陰のエリアで工場を建設していただきたいと。

最初の取り組みとして、インドの大手香辛料メーカーの工場誘致計画を発表。
この10年間の関係から一転、ケララ側の「本気度」が示されました。

中海・宍道湖・大山圏域市長会・上定昭仁会長:
今後弾みをつけてインドと日本の関係、ケララ州と山陰の関係が強化されるものと確信しています。

中海・宍道湖・大山ブロック経済協議会・田部長右衛門会長:
トップ同士が手を握って、即断即決で行動力のある所を示さないと全く進まないので、他の事業や自治体の交渉でも同様の形で進めてほしいことを伝えたい。

ケララ州滞在中、訪問団は日本とのビジネス促進イベント『ジャパンメラ』にも参加しました。
イベントを主催したのは「INJACK」。
ケララ州や日系の企業など約30社が出展しました。
山陰からも観光やIT関連など5つの企業・団体が参加し、ビジネスのチャンスを探りました。

中海・宍道湖・大山圏域観光局のブース。
特に力を入れたのは、山陰への「インセンティブ旅行」誘致です。

インセンティブ旅行は、社員のモチベーション向上のため企業が用意するいわば“ご褒美旅行”。
アメリカや中国、インドなどの企業で盛んに導入されている社員への報奨制度で、優れた業績を挙げた社員を対象に会社が経費を負担し、旅行を提供します。

“ご褒美”だけに豪華なパーティーや高級な宿泊施設の利用を伴うことから、受け入れ側では大きな売上につながります。
このため、近年、積極的に誘致に乗り出す自治体が少なくありません。
インドからの訪日旅行者の1人あたりの消費支出は、全ての旅行者全体の平均を上回る水準で、圏域観光局としてもいち早く取り込みたいと狙いをつけています。

来場者:
(山陰は)写真と映像しか見たことしかないが、ぜひ行ってみたいと思いました。

来場者:
山陰を知らないことが問題だと思う。みんなに日本を紹介します。

日本政府観光局の調査によると、インドの旅行会社が今後注力したいインセンティブ旅行の行き先として日本はヨーロッパに次ぐ2番目に挙げられ、大きな可能性を秘めていると言えます。

Q手応えは?
観光局ブースに参加 安来節保存会・一宇川 桜さん:
どうだろう。多分まだ皆さん『ここはどこ?一体どこにあるんですか』みたいな認識だと思う。

「山陰」にとって、課題は知名度アップ。
今回の『ジャパンメラ』で圏域観光局は、東京・大阪などを巡ったあと、山陰に立ち寄るプランを提案。
出雲大社や松江城など観光地だけでなく、地元企業の見学などビジネスにつながるプログラムも盛り込みました。

中海・宍道湖・大山圏域観光局:吉川浩二代表理事:
すぐに日本にお出かけになる人が現れるかと言われると、そんなに甘いものではないと思う。工場の視察などを組み込むことは非常に喜んでいただいているという感触を得ている。

日本とインドの「地方」同士がタッグを組む山陰とケララの経済交流。
国内の地域間競争にこの10年のアドバンテージをどのように生かすのか。
これから真価が問われます。

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