米国のディック・チェイニー元副大統領が3日、死去した。84歳だった。米メディアが4日伝えた。共和党のブッシュ(子)政権で対テロ戦争を主導し、現代の米国で「最も強力な副大統領」と呼ばれた。だが、強硬なネオコン(新保守主義者)の代表格で、イラク戦争の泥沼に米国を引きずり込んだ人物として批判もたえなかった。

 米メディアが報じた家族の声明によると、死因は肺炎と心臓・血管疾患による合併症だった。長く冠動脈疾患をわずらい、2012年には心臓移植を受けたが、その後はメディアへの出演など活発に活動していた。

 1941年、米中部のネブラスカ州生まれ。ワイオミング大大学院で政治学修士を取得。75年に34歳の若さでフォード大統領の首席補佐官になった。下院議員を経て、89年にブッシュ(父)政権で国防長官に就任。クウェートに侵攻したイラク軍を撤退に追い込んだ湾岸戦争の指揮に関わった。95年から2000年までは石油関連複合企業のハリバートン社の最高経営責任者(CEO)を務めた。

 2001年1月にブッシュ(子)政権の副大統領になると、同時多発テロへの強硬な対応を主導した。大統領の権限を拡大し、容疑者の無期限拘束や残忍な方法での尋問などを将来のテロ防止のためだとして推進。03年にはフセイン政権が大量破壊兵器を所持していると主張し、同政権打倒をめざしイラク侵攻を進めた。

 大量破壊兵器は結局見つからず、イラクに長期の混乱をもたらした戦争では多くの民間人と米兵が犠牲になったが、退任まで戦争の正当性を主張し続けた。

 内政面でも強い権限を持ち、企業や富裕層に有利なブッシュ氏の経済計画や減税政策を強力に支持した。

 退任後はメディア出演などで積極的な政治論評を繰り広げた。トランプ大統領には批判的で、「大統領職に不適格」「民主主義への重大な脅威」などと発言。昨年の大統領選では民主党候補のハリス前副大統領に投票することを表明していた。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。