欧州連合(EU)の環境相会合は5日、2040年までの温室効果ガスの新たな排出削減目標に合意した。全体目標である「1990年比で90%削減」は維持する一方、域外での排出権取引による削減分の算入を認める新たな仕組みを導入。実質的に目標は後退したかたちだ。
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この日採択された法案では、加盟国に「40年までに85%削減」を義務づける。これに、途上国などとの排出権取引による最大5%の削減を上乗せすることで、EU側は「全体で90%削減を維持している」と説明する。
一方で、加盟国の自助努力による域内削減の比率が下がることから、環境団体からは「責任を外に押しつけて目標を骨抜きにした」との批判が上がる。
法案は、10日から始まる国連気候変動会議(COP30)を前に採択された。50年までに総排出量ゼロを定めた欧州気候法を改正するもので、法的拘束力を持つ。ただ、経済的な後退などの恐れがある場合には、90%削減との目標を2年ごとに見直す可能性があることも盛り込まれた。
競争力で米国と差、産業界から見直し圧力も
EUはまた、COP30に提出する国別削減目標として、「35年までに66.25%~72.5%削減」にも合意したが、これには法的拘束力はない。
これらの目標は当初、10月のEU首脳会議でまとまる予定だった。しかし、フランスなどが先送りを要求。今月4~5日の環境相会合で、約24時間の協議の末、ようやく決着した。
EUはこれまで、先進的な気候変動対策を掲げて世界をリードしてきたが、米国で気候変動対策に後ろ向きなトランプ政権が今年1月に発足。産業競争力で米国との差は開くばかりで、欧州の経済界からは、厳しい環境規制などの見直しを求める声が強まっている。
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