第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の開幕を前に、各国首脳らと写真に納まる石破首相(20日、横浜市西区)=代表撮影

日本とアフリカ諸国の首脳らによる第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が22日まで横浜市で開かれた。日本はアフリカの安定や経済発展に寄与し、ともに成長する努力を官民で重ねてほしい。

同日採択した「横浜宣言」は、人工知能(AI)などを活用したアフリカの変革を日本が支援することなどを打ちだした。

石破茂首相は「インド洋・アフリカ経済圏イニシアチブ」と銘打った物流網の整備を提起した。記者会見では「インド、中東の国々とともにアフリカの域内統合、産業発展に貢献したい」と述べた。日本の経済安全保障にも役立つ構想として期待したい。

企業の進出や投資リスクを考えるとき、アフリカの安定や貧困の問題は切り離せない。日本の技術や知見を生かし、課題の解決を一緒に探る意義は大きい。成長するアフリカの活力を取り込み、日本企業や社会の利益につなげる好循環を追求すべきだ。

アフリカは人口が増え、2050年に世界人口の4分の1を占めると予測される。「最後のフロンティア」と呼ばれる巨大市場で、厚みを増す消費者層は日本企業の商機になる。再生可能エネルギーに恵まれ、重要鉱物の安定調達にも重要な役割を果たしうる。

日本は「援助から投資へ」とうたってきたが、アフリカへの直接投資残高が13年末のピークを下回ったままなのは残念だ。

トランプ米政権が対外援助を削るなど途上国支援には逆風が吹く。日本も財政事情が厳しいが、食料生産や教育、保健などで効果的な協力を続けるのが望ましい。

成果がすぐに表れづらい地道な取り組みが、日本への信頼の基盤になってきたからだ。アフリカは国連加盟国の4分の1に当たる50カ国以上を擁し、グローバルサウス(新興・途上国)の一角を占める。国連外交や多国間協調で貴重な協力相手にも見込める。

第1回TICADを東京で開いた1993年、日本は世界第2の経済大国だった。この種の会議の先駆けだったものの、今や米欧や中ロも類似の対話をアフリカと重ねる。中国は大規模インフラ支援で、ロシアは安全保障協力で影響力を増している。

日本が他国と同じ土俵で競う意味はない。強みのある分野でアフリカのニーズを丁寧にくみ取り、信頼されるパートナーとして伴走していく必要がある。

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