
【ニューヨーク=竹内弘文】20日の米株式市場で、朝方に急伸していた大手テクノロジー銘柄の株価はその後一転して急落した。ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数の日中変動幅は相互関税が市場を揺らした4月以来、7カ月ぶりの水準。米半導体大手エヌビディアの好決算でも割高感のにじむ人工知能(AI)銘柄への懐疑を拭えなかった。
エヌビディア3%安、好決算の効果続かず
前日に2025年8〜10月期決算を発表したエヌビディアの株価は朝方に一時前日比5%高となり、同銘柄が主導してナスダック総合は米東部時間午前10時半ごろに前日比2.6%高まで上げた。その後は指数の上値は重くなり正午ごろマイナス圏に転落。一時前日比2.3%安を付けた。日中の上げ下げの差は4.9ポイントとなり、4月9日(12.7ポイント)以来の大きさを記録した。

終値は2.2%安だった。ダウ工業株30種平均は前日比386ドル(0.8%)安の4万5752ドルで引け、日中の値幅は1100ドルを超えた。
エヌビディアも朝方の上昇を帳消しにして3%安で引けた。マイクロソフトやアマゾン・ドット・コムなど、AI投資に積極的な主要テック銘柄もそろって同様の株価推移をたどった。金融市場の不安心理を映すとされる変動性指数(VIX)は26.42と、終値として4月下旬以来の高水準だった。
エヌビディア決算は1株利益など各指標で、切り上がっていた市場の期待すら上回った。決算説明会の場で「25年と26年のデータセンター向け売上高が目標対比で上振れする可能性について楽観的な見方を示していた点も非常にポジティブ」と米運用会社ギャベリー・ファンズの槙野竜太氏は語る。
著名投資家ダリオ氏「バブルはじける要因見当たらず」

19日の決算発表後、時間外取引でエヌビディアや他の大手テック銘柄の株価は軒並み上昇していた。積極的なAI投資の回収可能性に対する懐疑論から各社の株価は11月に入って低迷していただけに、AI銘柄の筆頭であるエヌビディアの決算内容は懸念を和らげるものと受け止められた。ただ、効力は1日も持続しなかった。
米ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者で著名投資家のレイ・ダリオ氏は20日に米CNBCの番組に出演し「我々が現在バブル領域にいるという点はかなり明確だ」と述べる一方「バブルをはじけさせるものはまだ見たらない」とも語った。割高感が強いAI銘柄とどう向き合うか、市場参加者の強弱感が交錯する。
専門家「追加の売り圧力も」
20日の取引開始前に発表となった9月分の雇用統計では非農業部門の就業者数の伸びが市場予想を上回る一方、失業率は市場予想に反して4.4%へ悪化する結果となった。米金利先物市場では12月利下げ予想が約40%と前日より10ポイント程度上昇した。
世界最大の時価総額を抱える企業の好決算でも、一般に米株の支援材料とされる金融緩和への期待浮上でも、高値を維持できない地合いの弱さが露呈した20日の相場展開。テック銘柄に集中投資していた投資家がポジション(持ち高)の一部解消を示唆する。地滑り的なポジション解消へと発展するシナリオも専門家は指摘する。
米サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ戦略共同責任者、クリス・マーフィー氏は「相場の一段安があれば(数理モデルやデータ分析に基づき売買判断する)システマティック投資戦略が現状の買い持ちを解消し、追加的な売り圧力が生じうる」と分析していた。
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