高市早苗総理の「台湾有事」発言をめぐり日中関係が緊迫する中、国際的な外交戦が水面下で展開されています。
「旬感LIVE とれたてっ!」では政治ジャーナリストの青山和弘さんが、トランプ大統領と高市総理の電話会談に至る背景を解説しました。
■米中首脳の接近と日本の立ち位置
「アメリカと中国は、先月の米中首脳会談で、かなり接近した。それまでは関税をかけ合って対立する状況でしたが、ある意味、トランプ大統領が折れたような形で、習近平主席と接近した。それが今の中国側の強気の元にあると見られています」と青山さんは指摘します。
このような米中関係を背景に、きのう=24日、習近平国家主席はトランプ大統領との電話会談で高市総理の発言について説明を行いました。
トランプ大統領が習主席に理解を示すと、日本がさらに孤立するような懸念もありましたが、トランプ大統領は25日に高市総理と電話会談し「習主席からこんな電話があったよ」と伝えるという形で、日本側に配慮を示したと見られています。
これについて青山さんは「高市総理はこれを機会に、アメリカとの関係をもう一度日本側に引き戻す、『中国の言い分に理解を示さないでください』という話をしたと見られる。トランプ大統領を中心にした綱引きが行われているというのが、今の国際情勢だ」と解説しました。
■世論の反応と踏み越えられたライン
FNNの最新世論調査では、高市総理の「台湾有事」答弁について、「適切だ」と「どちらかと言えば適切だ」を合わせて6割を超える結果となっています。
しかし青山さんは、従来の答弁との違いを次のように説明します。
【青山和弘さん】「これまでの政府答弁であれば、『総合的に判断する』、『個別のことには答えられません』と、つっぱねるのが普通だった。それを高市総理は『こういう最悪のケースもあるかもしれません』と丁寧に言ったのが初めてのケースだった」
さらに高市総理の答弁を引き出した立憲民主党の岡田克也議員の意図について「岡田さんは高市総理が「存立危機事態は慎重に判断します」と答えるはずと思っていたようだ。『私も総理になったんだから、自分たちが攻撃を受けた場合じゃなければ、なかなか集団的自衛権は発動しませんよ』という発言を期待していたら、高市総理が自らの持論に沿って、『アメリカ軍が(台湾を)助けに来て、(アメリカ軍が)攻撃されたら、私たちも(アメリカ軍を)助けに行く、一緒に戦うかもしれません』という話をしたのが、(総理大臣として)初めて踏み越えたラインだった」と指摘しました。
■中国の対抗措置と過去の教訓
中国の過去の対抗措置についても振り返りました。
2010年の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事故の際には、中国側はレアアースの輸出を事実上停止したり、日本人4人を中国で拘束したりする措置を取りました。
また、2012年に尖閣諸島が国有化した際には、中国各地で反日デモが発生し、一部は暴徒化。日系企業の工場やスーパー、飲食店が襲撃される事態となりました。
当時の中国政府は「愛国精神で行った行動については罪に問わない」として、こうした行為を黙認したとされています。
■石原良純さんが指摘する「慎重さ」の必要性
タレントの石原良純さんは高市総理の発言について「これが不用意な発言だったのか、それとも意図した発言なのかというところを見たときに、どうもこれは不用意だったかもしれない。
総理というものは国会答弁だけではなく、国際会議などでも、発言は非常に慎重にならなければいけない。応援してくれる人がいるからといって勢い余って言うようなことでは済まされない」と厳しく指摘しました。
さらに石原さんは、自身の父親である石原慎太郎さんが東京都知事だった時に尖閣諸島を購入し寄付金を集めた活動にもふれ「あの時は、都知事です。何にもしない政府はおかしい、と旗をあげた。直に中国とぶつかりあったわけではない。でもそれを切り取って、SNSでさも戦うことが勇ましいみたいな、『高市さんの発言はいいんだ』ということは怖い。
だって2010年の中国と2025年の中国では全然違う。国力も違うし、(軍事力の)強大さも違うし、何より強権国家になっている。一人の指導者によって。
外交というのは自分の国の正義だけを振りかざしてもいけないから、そこは本当に慎重に当たっていただきたい」と語りました。
■人間関係に例える日中対立
青山さんは日中関係の機微についてこのように説明します。
「人間関係でも、直接本人に『それを言っちゃおしまいよ』っことあるじゃないですか。『そういうケースも想定できるけど、本人にはそう言わない』っていうことを、総理大臣がそこを言ってしまったので、『日本の総理が初めてそう思っているけどと言ったとは何事だ』となっている」
さらに青山さんは「世論調査の支持が高いのは、『台湾有事があったら大変だ』という国民感情からだと思う。ただそれとはちょっと切り離して、総理大臣の発言は重たいということ」と指摘しました。
高市総理の発言をめぐる日中対立は、国民感情と外交上の配慮、そして国際社会における微妙な力関係の狭間で今後も展開していくことになりそうです。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2025年11月25日放送)
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