香港北部の高層住宅団地で26日、大規模火災が発生し、少なくとも55人が死亡、200人以上と連絡が取れていない。火は8棟中7棟に燃え広がり、依然、鎮火のめどが立っていない。
修繕工事中の竹製足場や可燃性シートが延焼拡大の要因とみられている。専門家は、燃えやすい素材で建物が覆われていたことで、さらに「煙突効果」といった現象が発生し、火が瞬く間に燃え広がった可能性を指摘する。
涙する住民「何もない」“過去最悪”香港の高層住宅火災
高速道路の前方で上がるおびただしい量の黒煙。現場の真横を通ると、高層住宅から炎が上がり、建物は煙に包まれていた。
26日、香港北部の高層住宅が密集した団地で起きた大規模火災。

住民:
ほら見て、また煙が出てる…。
これまでに少なくとも55人が死亡。現在も200人以上と連絡が取れない大惨事となった。
現場では燃えていく我が家を見つめ、涙する住民の姿があった。

住民:
全てのお金をつぎ込んでマンションを買ったけど、燃えてしまったら、もう何も残らない、何もないね…。
なぜ、ここまで被害が拡大してしまったのか。
現場の火災発生当時の状況から、炎が急速に燃え広がった、様々な要因が浮上してきた。

夜が明けてもなお、高層住宅から立ち上る黒煙…。
香港北部の海沿いに立つ高層住宅の団地で発生した大規模火災は、住宅7棟に燃え広がり、現場には黒焦げとなった高層住宅が建ち並ぶ異様な光景が広がっていた。
消防によると、この火災で少なくとも55人が死亡し、香港で起きた建物火災として過去最悪の被害となった。
記者リポート:
一夜明けましたが、現場では消火活動が続いています。黒い煙がまだ燃えています。現場は焦げた臭いがします。

火災は26日午後、香港北部の新界地区で発生。現場は8棟の高層住宅が密集し、4000人以上が生活する大規模な団地だった。
団地の周囲には、燃えていく我が家をなすすべもなく見上げる住民らの姿があった。

住民:
午後2時45分ごろ、突然とても大きな音が聞こえました。外を見ると遠くに第5棟の近くで火事が起きているのが見えたんです。だからすぐに家に戻って、荷物をまとめました。

画面右手の海側の棟で発生した火災は、次々と燃え広がった。日が暮れる頃には画面左手の棟まで炎に包まれ、闇夜に真っ赤な炎が浮かび上がり、そして次の瞬間、屋上付近に大きな火柱が立ち上った。

火は、団地の8棟のうち、7棟に燃え広がった。住民らは続々と警察車両などに乗り込み避難を開始。避難所で不安な夜を過ごした。
中には部屋に家族が残っていると話す男性もいた。

住民:
妻はまだマンションにいるんです。私は電話で逃げるように言いましたが、妻が家を出ると廊下も階段も煙で満ちていて真っ暗で、妻は仕方なく部屋に戻るしかなかったんです。
消火活動は夜通し行われたが、出火から丸一日が経っても鎮火には至っていない。

消防によると、この火事でこれまでに消防士1人を含む、55人の死亡が確認された。
また72人が病院に搬送され、うち15人が重体。
さらに200人以上と連絡が取れていないということだ。

住民:
打ちのめされています。隣人や友人がたくさん残されています。もう何が起きているのか分からない。

さらに住民男性は「(家に戻れず)私の犬がどなっているのか分からない。煙で窒息してしまわないか心配です」と話す。
すさまじい勢いで燃え広がった炎。その現場では、建物の周囲に組まれた足場が激しく燃え、崩れ落ちる様子が確認できる。

出火当時、現場では外壁の修繕工事が行われていて、香港では「竹の足場」が使われることが多く、地元メディアは、この竹の足場から火の粉が風で燃え移ったとの見方を伝えている。
足場の「竹」燃えやすく消火が難しい材質
炎を上げ激しく燃える竹。
これは竹炭を作るため、切った竹を燃やした際の映像。

竹は燃えやすく、火力が強いため一度火がつくと、消火が難しい材質だという。

竹虎 四代目 山岸義浩さん:
(Q.竹の特徴は?)とてもあぶら分が多い植物で、一度火がついたらなかなか消せないくらい強い火力で燃え上がります。

香港中心部の繁華街では2年前にも工事中の高層ビルで火災が発生。
この時も組まれていた竹の足場が激しく燃え爆発音が鳴り響き、火災現場周辺の道路には、竹が散乱していた。

香港では2025年3月、足場の崩落事故防止などの安全性の問題から、竹の足場を規制する方針を打ち出した。今回の火災は、政府が徐々に竹から金属製の足場を増やしていく移行期間中に起きた。
さらに延焼拡大したワケ「煙突効果」が要因か
しかしなぜ今回、ここまで炎が急速に燃え広がり、香港で過去最悪の事態となるまで被害が拡大したのか。
現場の状況を見た元東京消防庁麻布署長の坂口さんは、こう指摘する。

市民防災研究所 坂口隆夫理事:
一番大きな要因は、工事中の足場が金属ではなくて竹でできていたものを使用していたと、それから工事用のシートが、これも可燃性のものを使用していた、この2つが(火が)外壁に広がった大きな要因。

この修繕工事では、竹の足場が組まれていたことに加え、外壁を覆っていたネットが防火基準を満たしていなかったことが判明した。さらに、エレベーターホールの窓の外側が燃えやすい発泡スチロールで覆われていたことも分かっている。

香港当局は、修繕工事を担当していた業者の取締役ら3人を過失致死の疑いで逮捕したと発表。会社を家宅捜索した。
専門家は、燃えやすい素材で建物が覆われていたことで、さらに「煙突効果」といった現象が発生し、火が瞬く間に燃え広がった可能性を指摘する。

市民防災研究所 坂口隆夫理事:
「煙突効果」というのは、要は、足場工事用のシートとマンションの外壁との空間、これが“空気の通り道”になっていき、速く延焼を拡大していった。
しかし依然、火災の発生原因など、不明の点が多く残されている香港の大規模火災。
消防によると、27日新たに高層住宅31階から男性が1人救助された。
(「イット!」11月27日放送より)
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