シーインの紙袋を持つ顧客(11月5日、パリ)=ロイター

【パリ=北松円香、上海=若杉朋子】各国・地域が相次いで中国からの越境電子商取引(EC)対策に乗り出している。米国の非課税措置撤廃に続き、欧州連合(EU)が少額小包に3ユーロ(約550円)の課税を決めた。フランスも独自の課税案を検討している。中国の過剰生産が流れ込み、自国の小売企業を圧迫することなどを警戒している。

EU加盟国は12日の閣僚理事会で、2026年7月からこれまで免税対象だった150ユーロ(約2万7000円)未満の少額小包に3ユーロを課税すると決めた。オンライン購入による全輸入品の93%が対象になる。

課税は商品の種類ごとだ。1つの小包の中に2種類の異なる商品が入っている場合、税額は6ユーロになる。

フランスはEUの決定とは別に26年度予算案に輸入小包への課税を盛り込んでおり、上院の審議では税額は政府案の2ユーロから5ユーロに増額された。仏経済・財務省によると実現した場合、輸入小包には商品の種類ごとにEUとフランス双方の税がかかる。

今回の課税案はSHEIN(シーイン)やTemu(テム)といった中国系のネット通販を標的にしている。オンライン購入でEUに届く少額小包が急増し、24年は46億点に達した。うち91%が中国から発送されており「我々の製造業や小売りを危険にさらす」(レスキュール仏経済・財務相)との危機感が募っている。

トランプ米政権は5月、合成麻薬フェンタニルの流入を阻止するとして中国からの小口輸入への非課税措を撤廃した。米国への輸出のハードルが上がった結果、中国のEC企業は欧州など他地域での販売強化に乗り出している。

米市場調査会社のセンサータワーによるとシーインは今年春、デジタル広告費を米国で減らした一方で欧州を大幅に増やした。11月にはパリの百貨店内に初の常設店もオープンし、現地の小売りを圧迫するとして小売りや一部消費者の反発を招いた。

PDDホールディングス傘下のテムは日本や米国、フランスを含む約40の国や地域で現地に在庫を持つ事業者からの出品を受け付け始めた。同じ中国製の商品でも、税導入前に現地に積み上げた在庫なら税を回避できるためだ。

日本でも、個人輸入品の関税や消費税を低くするこれまでの優遇措置廃止が検討されている。

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