ダボス会議で講演するトランプ大統領(21日、スイス東部ダボス)=ロイター

【ダボス(スイス東部)=北松円香】トランプ米大統領が世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)での演説で、デンマーク自治領グリーンランド取得のための武力行使はしないと明言した。トーンダウンととれる発言に欧州各国からは安堵の声も漏れた。一方で発言には執念深さもにじみ、軟着陸に向け米国との対話を模索すべきだとの声も出ている。

トランプ氏は演説で、グリーンランド領有に関して「軍事力を使えば、率直に言って我々は止められない。しかし、私はそんなことはしない」と指摘。「今みんなが『ああ、よかった』と言っているだろう。人々は私が軍事力を使うのではないかと思っていたが、私は力を使う必要はないし、使いたくもないし、使わない」と念を押してみせた。

会場で演説を聞いていたスウェーデンのブッシュ副首相は演説後、トランプ氏の発言について「トランプ氏は軍事力で手に入れるつもりはないとはっきり述べていた。その言葉を守るよう彼に求め続けるつもりだ」と述べ、一定の評価をした。

元北大西洋条約機構(NATO)事務総長でノルウェー財務相のストルテンベルグ氏も米CNNの取材に武力の不行使は「重要なメッセージだ」と指摘した。「これまで、多くの人が彼が本当にグリーンランドを手に入れるために武力を使うと脅すのではないかと恐れてきた」と語った。

カリフォルニアのニューサム知事は「(グリーンランド取得のために)軍事力の使用が最初から現実的だったとは思わない。しかし、あの語調には深い不安が表れていたと思う」と指摘し、グリーンランド問題を巡る市場の反応などを意識してトーンダウンしたのではないかとの見方を示した。

一方で、仏AFP通信によるとデンマークのラスムセン外相も武力行使の否定については「ポジティブだ」とした半面、「米大統領は依然野心を燃やしている」と警戒感も示した。欧州連合(EU)はグリーンランドの領有権については「交渉の余地はない」(フォンデアライエン欧州委員長)との立場だ。

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁はこの日の朝に仏ラジオ局RTLが放送したインタビューで「トランプ氏の絶え間ない方針変更で生じる不確実性を懸念している」と語った。グリーンランドを巡る不透明性は金融市場でも株安や金利上昇などの形で不安要素として浮上している。

米欧の言い分が逆を向く中で、今後は対話の枠組みや落とし所が焦点となる。NATOのルッテ事務総長はグリーンランド問題の解決に向けてNATOが北極圏の防衛力の強化を図るべきだとの考えを強調。ポーランドのナブロツキ大統領は「米国がNATO軍事費の65%を支払っている。トランプ氏の発言を考慮すべきだ」と述べ、欧州側の歩み寄りも必要との認識も示した。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。