
【ニューヨーク=佐藤璃子、吉田圭織】金(ゴールド)の国際価格が26日、初めて1トロイオンス(約31.1グラム)5000ドルの大台を突破した。地政学リスクの高まりや米金融政策の不透明感から安全資産として買う動きが強まっている。あまりの高騰ぶりに、金取引の本場米ニューヨークでは代替として銀を求める傾向も強まっているという。
米投資家、4割が金購入か
23日、ニューヨーク市内で貴金属店が集まる「ダイヤモンド街」を訪れると、宝石店の前にいかつい男性が立ち並び、通りがかる人に金の購入を呼びかけていた。金価格が歴史的高水準で推移する中、販売するのに必死だ。
「金価格が上がりすぎて、誰も買いにこない」。ニューヨーク市クイーンズ地区で宝石店を30年間運営してきたアレックス・Kさんは不満げに語った。「昔は投資目的やお祝いとして金を買う人が多かった。だが、誰も払えない値段まで上がってしまった」という。

一方で「銀価格は急激に上昇したことを受けて、投資目的で買う人が最近増えた」とも話す。金に比べて手が届きやすい価格も購入意欲を押し上げる要因となっているようだ。銀(シルバー)価格も23日、ニューヨーク先物市場(中心限月)で史上初めて1トロイオンス100ドルに乗せた。
米投資情報サイトのゴールドIRAガイドが1月、米国で2000人を対象に実施した調査によると、過去12カ月間に投資目的で金または銀を購入した人の割合は38.6%にものぼった。そのうち9割が、再度購入することを検討しているという。
主要な金ETF、1カ月で5000億円の資金流入
個人の売買のみならず、機関投資家のマネーも流入している。QUICK・ファクトセットによると、金を対象とする上場投資信託(ETF)の「SPDRゴールド・シェアーズ」(GLD)は過去1カ月で33億6400万ドルの流入があった。地政学リスクの高まりや米金融市場の不透明感などから、今後金の保有層がさらに広がっていくと見る専門家も多い。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブルハルディ氏は「各国の中央銀行や投資家による金の需要が今年さらに拡大すると見込まれることから、我々は金のロングポジションを維持する」との見解を示す。
高すぎる金、各国中銀が二の足も
金や銀を求める動きが加速した背景に、地政学リスクの高まりがある。トランプ米政権による、デンマーク自治領グリーンランドの取得を巡る欧米対立への懸念が高まっていたことや、イラン情勢への警戒感などを受けてリスク回避のためのマネーが流入した。
米連邦準備理事会(FRB)の独立性が揺らいでいることも、貴金属需要の高まりを促した。今月に入り、パウエルFRB議長は自身が刑事捜査の対象となったと公表した。市場では中央銀行の独立性が揺らいで金融政策が適切に進められなくなるとの懸念が強まった。
「安全資産」としての金・銀への投資が続く一方、懸念も残る。モルガン・スタンレーのエイミー・ガーワー氏は「価格上昇による需要減退のリスクがある。金価格が上昇すると、中央銀行は準備金目標を達成するために金の購入量を減らす必要が出てくる」と指摘する。
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