
【ロンドン=渡部泰成】英政府は9日、香港市民の特別ビザ制度を拡充すると公表した。民主派新聞・蘋果日報(アップル・デイリー、廃刊)の創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏(78)が香港国家安全維持法(国安法)違反の罪で懲役20年の量刑を言い渡されたことをうけた。政治活動や言論への統制が厳しい香港からの移住希望者を支援するための措置となる。
対象は1997年の中国への香港返還前に生まれた「英国海外市民(BNO)」の資格を持つ香港市民を親に持つ成人。単独でビザを申請できるようにする。対象者の配偶者と子どもの移住も受け入れる。
政府は今回の変更で、今後5年で2万6000人の受け入れを推計する。従前、ビザはBNO資格を持つ香港市民と、その扶養家族らを中心に発給されていた。
黎氏は香港民主派の主要人物の一人で、95年にアップル・デイリーを創刊した。中国共産党に批判的な論調で知られる。香港の高等法院(高裁)は9日、国安法違反の罪で有罪判決を受けた黎氏に懲役20年の量刑を言い渡した。2020年に施行された国安法の裁判の判例では最も重い量刑となった。
英紙ガーディアンは、黎氏への判決について「かつてはほぼ自由な都市だった香港が、中国共産党に支配された当局によって異論が激しく抑圧される都市に変貌したことを示している」と指摘した。
欧州からは批判の声があがる。欧州連合(EU)欧州委員会の報道官は9日、黎氏の量刑を遺憾とする声明を発表した。即座に無条件で釈放することを求めた。クーパー英外相も同日、事件は政治的な訴追で不当だと非難した。
スターマー英首相は1月、北京で習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談した際にもこの問題を提起したという。英国としてはBNO資格を持つ香港市民に寄り添う姿勢を見せる一方、中国が反発を強めれば関係正常化に向けた動きに影響する可能性がある。
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