ラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演した小原凡司氏

中国人民解放軍の制服組トップ、張又俠氏の失脚で、習近平(シー・ジンピン)国家主席が台湾への武力侵攻を決断するのはしばらく難しくなるとの見方が広がっています。習氏による相次ぐ軍上層部の粛清で、指揮命令系統が機能しなくなっているとの分析が多いためです。

しかし、楽観していいのでしょうか。笹川平和財団上席フェローの小原凡司氏はラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演し、人工知能(AI)が操縦する戦闘機など「無人兵器」の実用化で、習政権が台湾に侵攻する心理的なハードルは今後「低くなる」と警鐘を鳴らしました。

AIと無人機、そしてビッグデータを組み合わせた武器システムの開発では、米国が先行しています。ただ、中国も2010年代の半ばからAIを使った無人兵器の開発に力を入れており、米国に追いつきつつあるとの見方は少なくありません。

無人兵器の実戦配備が進めば、中国人民解放軍は台湾への軍事行動に踏み切っても死傷する兵の数を大幅に減らせます。一人っ子政策を長く続けた中国で、多くの若者の死は社会不安につながり、習政権への不満が高まりかねません。無人兵器を大量に投入できれば、こうした心配をせずに台湾への軍事作戦が可能になります。

小原氏によると、中国軍は熟練した戦闘機のパイロットが慢性的に足りません。AI戦闘機を実戦で使えるようになれば、こうした問題も解決します。

中国軍の最高指導機関である中央軍事委員会は、習氏をトップとする7人のメンバーのうち、ナンバー2の張又俠氏を含む5人が失脚しました。習氏を止められる人物はひとりも残っていません。小原氏は「習氏が(台湾への軍事行動を)やれといったら、直接、部隊が動くかもしれない」と心配しています。台湾有事のリスクは以前と比べて低下していないというわけです。

唯一、習氏に台湾への軍事行動を思いとどまらせうる存在は、やはり米国でしょう。米軍が介入する可能性がある限り、中国にとって台湾への武力侵攻は大きなリスクを伴います。

習氏は4月に訪中する予定のトランプ米大統領から、台湾問題で何らかの譲歩を引き出そうとするでしょう。両者の駆け引きが台湾情勢、ひいては日中関係の行方を大きく左右します。今後の米中関係から目が離せません。

小原氏の解説は以下のポッドキャストでお聴きいただけます。

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(編集委員 高橋哲史)

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