イランの首都テヘランで爆発後に煙が上がった(28日)=AP

【イスタンブール=渡辺夏奈、ワシントン坂口幸裕】米国とイスラエルは28日、イランを攻撃した。トランプ米大統領は「イランの核兵器取得を阻止する」と強調した。イラン国民に「政府を掌握せよ」と現体制の転覆を呼びかけた。イラン核問題は対話による解決が模索されていたが、中東の混乱が一気に拡大した。

米国とイスラエルによるイラン攻撃は2025年6月の「12日間戦争」以来。米ニュースサイトのアクシオスは、今回はイラン最高指導者のハメネイ師を含む指導者らを標的にした体制転換を狙った攻撃だと伝えた。

イスラエルのカッツ国防相は28日、イランに先制攻撃を実施したと発表した。イランメディアによると首都テヘランのほか、中部イスファハンや北西部タブリーズなど幅広い場所で空爆を受けた。イスラエル軍は数十の軍事目標を狙ったとしている。攻撃は「必要とされる限り続く」という。

中東メディアによると、イラン南部ホルムズガン州の小学校でも空爆があり、85人が死亡した。

イランは即日、報復攻撃に出た。国営メディアによると、イラン革命防衛隊はアラブ首長国連邦(UAE)やバーレーン、カタールの米軍基地を攻撃したと発表した。UAEでは1人が死亡した。サウジアラビア外務省も首都リヤドなどが攻撃を受けたと発表した。

イランはイスラエルに対してもミサイルを複数発射した。革命防衛隊は「(報復は)敵が決定的に打ち破られるまで容赦なく続く」と主張した。

トランプ氏は28日、SNSに投稿した動画で「イランは核の野心を放棄するあらゆる機会を拒絶した。容認できない」と攻撃を正当化した。「イラン政権からの差し迫った脅威を排除し、米国民を守る」と語った。

トランプ氏はイラン側に核開発を完全放棄する意思はないと判断したとみられる。米イランは2月に入ってオマーンの仲介で高官協議を3回開いた。イラン側は制裁解除と引き換えに高濃縮ウランの希釈などで歩み寄りを見せたとされるが合意には至らなかった。

トランプ氏は25年12月にイランで政権に対する大規模なデモが発生して以降、介入の可能性を示唆してきた。

28日の動画ではイラン国民に対し「自由のときは近い」「我々(の攻撃)が終わったら、政府を掌握せよ。あなた方がどう応えるか見てみよう」などと呼びかけた。革命防衛隊に対して武装解除を要求した。「武器を捨てれば完全な免責を与える」とも語った。

イスラエルのネタニヤフ首相も同日、声明で「専制政治の重荷から自らを解放し、自由で平和を求めるイランを実現する時が来た」と唱えた。

25年6月の米軍による攻撃はイラン中部フォルドゥとナタンズ、イスファハンにある3つの核施設に対象を絞り、追加攻撃もなかった。今回は首都テヘラン攻撃に踏み切り、イランの政権中枢の排除を目的としている可能性がある。

米CNNは衛星画像からテヘランにあるハメネイ師の邸宅が破壊されたと報じた。ロイター通信は当局者の話として、ハメネイ師が「安全な場所に移った」と伝えた。イランのタスニム通信は同国のペゼシュキアン大統領も無事だと報じた。

イランのアラグチ外相によると、米国とイランは3月2日にウィーンの国際原子力機関(IAEA)本部で実務者協議を開く予定だった。次回の高官協議も「おそらく1週間以内に開く」との見通しを示していた。今回の攻撃で交渉により核問題の解決を目指すのは極めて困難になった。

国連安全保障理事会は米時間28日午後(日本時間3月1日午前)、緊急会合を開催する。

日本政府はイランなどからの邦人退避に向けた準備に着手した。イランの在留邦人およそ200人に現時点で被害は出ていない。UAEの空港当局は28日、ハブ空港であるドバイ国際空港とドバイ郊外のマクトゥーム国際空港の全便の発着を当面停止すると発表した。

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