
【ソウル=小林恵理香、マニラ=藤田祐樹】韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は3日、国賓としてフィリピンを訪問し、同国のマルコス大統領と会談する。防衛装備品の輸出に力を入れる韓国は首脳会談で、軍の近代化を進めるフィリピンと安全保障分野を中心に協力拡大を協議する。
李氏は3日、マニラのマラカニアン宮殿(大統領府)でマルコス氏と会う。韓国大統領府によると、防衛産業やインフラ整備、原子力、重要鉱物資源のサプライチェーン(供給網)などが議題になる見通しだ。
李氏はフィリピンに先立ち、1〜3日にシンガポールを訪れた。同国のローレンス・ウォン首相との会談では、人工知能(AI)などでの協力推進を確認した。
韓国にとってフィリピンは重要な防衛装備品の輸出先だ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2020〜24年の防衛産業の輸出規模で韓国は世界10位だった。韓国からの輸出は東欧のポーランドが全体の46%を占め、フィリピンが14%で2位だった。
韓国は歴代政権が国家戦略として防衛産業の輸出促進に取り組んできた。韓国は北朝鮮と休戦状態にあり、在韓米軍への依存を減らす「自主国防」の理念からも、防衛産業の育成を重視してきた。
韓国防衛事業庁のデータによると、韓国の防衛産業の輸出額は20億〜30億ドル(約3100億〜4700億円)で推移していたが、21年以降は100億ドルを一気に超えた。ロシアによるウクライナ侵略以降、防衛力を高めたい欧州で需要が増えたことで輸出増の追い風となった。
韓国製の武器は他国に比べて比較的安価で、費用対効果を重視するフィリピンのような新興国に需要があるとみる。相手国の安保環境や財政状況、産業構造などを徹底的に調べ、売り方を柔軟に考える手法を強みとする。
経済安保の分野でも近年の米中対立などを踏まえ、サプライチェーンの多角化の重要性が増す。韓国は東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力を重視し、24年にはASEANとの関係を「包括的戦略パートナーシップ」に引き上げた。
一方でフィリピンは26年、ASEANの議長国を務める。南シナ海で中国による威圧的な行動にさらされるフィリピンにとって、同盟国の米国を基軸に韓国や日本、オーストラリアなど同志国との安保協力の拡大が欠かせない。
トランプ米政権は西半球を優先する「ドンロー主義」を掲げ、イランを含む中東情勢も緊迫度を増す。ASEAN内にはアジアが抱える地政学リスクに対する米国の関心が低下するのではとの懸念もくすぶる。フィリピンは周辺の同志国の力を借りて抑止力を高める。
日本は防衛装備品などを無償で提供する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」など新たな仕組みを使ってフィリピンを支援してきた。装備品輸出は警戒管制レーダーを完成品として初めて輸出した実績はあるが、殺傷性のある装備品は輸出できないという制約を抱える。
フィリピン軍は装備更新を急いでいるだけに韓国への期待は大きい。フィリピン軍は今年1月、韓国から最新の哨戒艦を受け取った。22年に発注したもので計6隻を導入する。25年には軽戦闘機「FA50」を12機購入すると決めた。
経済面でも両国の関係は深い。25年にフィリピンを訪れた外国人観光客のうち韓国からは135万人近くと全体の2割超を占めて最も多かった。韓国造船最大手のHD現代グループが25年にスービック港に造船所を設けるなど、直接投資が拡大する兆しもある。
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