
中国が議長を務め、20カ国超の首脳らが参加した上海協力機構(SCO)首脳会議が1日閉幕した。習近平国家主席は多国間主義を軽視するトランプ米政権に対抗し、国連や世界貿易機関(WTO)を中心とする国際協力の堅持を唱え、グローバルサウス(新興国・途上国)に結束を呼びかけた。
国際協調の重要性は論をまたない。だが中国は覇権主義的な海洋進出をやめず、意に沿わぬ国へ経済威圧を強めるなど、強権的な振る舞いが目立つ。日本は欧州やオーストラリア、韓国などの同志国と共にサウスと連携を図り、そこに米国も呼び込む必要がある。主導権を中国に渡してはならない。
SCOは中国とロシア、中央アジア4カ国が2001年に創設し、後にインドやイランなどを加えて10カ国体制となった。今回の首脳会議はトルコやエジプト、マレーシアなどの非加盟国も招き、過去最大の規模となった。
習氏は一方的な高関税措置をとる米国を念頭に「冷戦思考、陣営対立、いじめ行為に反対する」と述べ、「平等で秩序ある多極化世界」の構築を訴えた。その一環として「SCO開発銀行」の早期設立や、加盟国への20億元(約400億円)の無償援助を表明した。
開発銀行を持つ多国間協力は、中ロ印、ブラジル、南アフリカの原加盟5カ国からメンバーを急拡大するBRICSと重なる。サウスの国々が参画する枠組みを重層的に広げ、中国主導の連携を既成事実化する狙いが透ける。
地球温暖化や資源高など、世界の問題の多くは先進国の責任なのに、被る影響は自分たちの方が大きいという不満をサウスはため込む。これまで米欧や中ロなど大国が取り仕切ってきた国際秩序に、成長著しいサウスの声を反映していくのは当然だ。
しかし中国はロシアのウクライナ侵略を黙認し、貿易を通じて戦時財政も下支えする。国有企業への巨額補助金や外資に対する技術移転の強要、自国が圧倒的な生産シェアを持つレアアースの輸出制限など、WTO原則からの逸脱も目立つ。中国のもとで真に平等な秩序が生まれるとは思えない。
アジアで唯一の主要7カ国(G7)メンバーである日本は、米欧とサウスの結節点になり得る。民主主義や人権、法の支配といった普遍的な価値は堅持しつつ、サウスも参画する国際秩序づくりに主体的にかかわっていくべきだ。
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