トロント国際映画祭は、アメリカのアカデミー賞の前哨戦とも言われる北米最大の映画祭で、4日、カナダで開幕しました。
この映画祭では審査員ではなく観客が投票で選ぶ「ピープルズチョイス賞」が最高賞にあたり、上映されるすべての長編映画がその対象となります。
日本からは
▽国内で実写映画としては異例のヒットとなっている李相日監督の「国宝」
▽細田守監督の最新作のアニメーション映画「果てしなきスカーレット」
▽アカデミー賞俳優のブレンダン・フレイザーさんが主演を務めるHIKARI監督の「レンタル・ファミリー」
▽川村元気監督の「8番出口」
▽石川慶監督の「遠い山なみの光」
▽早川千絵監督の「ルノワール」
▽堀貴秀監督の「JUNK WORLD」
の合わせて7つの長編作品が上映されます。
トロント国際映画祭では期間中、合わせて290作品余りが上映され「ピープルズチョイス賞」をはじめとした受賞作品は今月14日に発表される予定です。
「国宝」とは
映画「国宝」は、吉田修一さんの小説が原作で、任きょうの家に生まれた主人公が歌舞伎に人生を捧げ、女形として人間国宝に上り詰めるまでの半生を描いた作品です。
主演の吉沢亮さんと横浜流星さんの2人が難しい歌舞伎の演目に挑んだ熱演が評判を呼びました。
およそ3時間という大作ながら興行収入は9月1日時点で124億円を超える大ヒットで、実写の日本映画としては歴代2位となっています。
監督は「フラガール」や「悪人」など数々のヒット作で知られる李相日さんです。
「国宝」は来年のアメリカのアカデミー賞、国際長編映画賞の日本代表にも選ばれていて、海外での評価も注目されます。
「果てしなきスカーレット」とは
「果てしなきスカーレット」は「サマーウォーズ」などで知られる細田守さんが監督と脚本を担当した長編アニメーション映画です。
主人公の王女、スカーレットが、“死者の国”と呼ばれる世界で父の敵である叔父への復しゅうの旅を続ける中で、現代の日本からやってきた看護師の男性と出会い、心を動かされていくという物語です。
スカーレットの声を芦田愛菜さんが、看護師の声を岡田将生さんがそれぞれ担当しています。
細田監督にとっては2021年公開の「竜とそばかすの姫」以来、4年ぶりの新作で、公開前から多くのファンからの期待を集めています。
「レンタル・ファミリー」とは
「レンタル・ファミリー」は報酬をもらって他人の家族を演じる“レンタル・ファミリー”の仕事をしながら日本で暮らすアメリカ人の男性が主人公の物語です。
全編が日本で撮影され、アカデミー賞俳優のブレンダン・フレイザーさん演じる主人公が、さまざまな思いを抱える依頼者と交流する中で、次第に心情が変化していく姿を描いています。
監督は、ベルリン国際映画祭のパノラマ部門で観客賞を受賞した「37セカンズ」などの作品で知られるHIKARIさんが務めています。
「8番出口」とは

映画「8番出口」は無限に続く地下通路を脱出する人気ゲームを実写化した話題作で二宮和也さんが主演を務めています。
同じ地下通路を繰り返し歩き続けて出口にたどりつけなくなる物語で絶望的な状況から抜け出そうともがく主人公を二宮さんが熱演しています。
作品は、カンヌ映画祭の「ミッドナイト・スクリーニング部門」で上映されるなど海外でも注目されています。
監督を務めた川村元気さんは数々のヒット作でプロデューサーとして関わっているほか監督としては今回が2作目の長編作品で、脚本も手がけています。
「遠い山なみの光」とは
映画「遠い山なみの光」は長崎生まれのノーベル文学賞作家、カズオ・イシグロさんの小説が原作の作品です。
長崎で原爆を経験し、その後、イギリスに渡った主人公が戦後、復興の途上にある長崎で過ごした日々の記憶をたどり、秘められた過去と向き合う物語です。
主人公の長崎時代を広瀬すずさんが、イギリスにわたったあとを吉田羊さんが演じています。
映画では被爆した人が直面した差別や心や体に残された傷なども表現され、葛藤を抱えながら戦後まもない長崎を強く生き抜く女性たちの姿が描かれています。
監督と脚本は2023年の日本アカデミー賞最優秀作品賞に選ばれた映画「ある男」を手がけた石川慶さんが務めています。
「ルノワール」とは
「ルノワール」は1980年代の日本を舞台に、仕事に追われる母親とがんで闘病中の父親と暮らす11歳の少女が主人公です。
それぞれに複雑な事情を抱えた大人たちとの関わりを通して、少女が成長していく物語で、子どもの目線から見た大人の弱さが描かれます。
監督の早川千絵さんは長編デビュー作の「PLAN 75」がカンヌ映画祭の「ある視点」部門で特別表彰を受けるなど、海外で注目される日本人映画監督です。
「ルノワール」は、ことしのカンヌ映画祭でコンペティション部門にもノミネートされました。
「JUNK WORLD」とは

「JUNK WORLD」は人形などを1コマずつ撮影したものを連続して再生し、動いているように見せる「ストップモーション」という手法で作られたアニメーション映画です。
荒廃した地球を舞台に、人類と人工生命体がチームを結成し、地下世界で起きた異変を探るため調査に向かうという物語です。
同様の手法で撮影され人気を集めた映画「JUNK HEAD」の前日譚にあたる作品で、監督の堀貴秀さんが脚本や撮影、照明、編集まで手がけ、およそ3年かけて制作されました。
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