タイの憲法裁判所は8月29日、隣国カンボジアとの国境問題への対応をめぐって、タクシン元首相の次女で、首相のペートンタン氏の解職を命じ、現職の首相が失職する事態となりました。

これを受け、5日、議会下院で首相を指名する投票が行われ、タクシン派と対立する保守派の野党、「タイ名誉党」の党首、アヌティン氏が過半数の支持を得て新たな首相に選出されました。

これにより、およそ2年続いたペートンタン氏が率いるタクシン派の「タイ貢献党」を中心とする連立政権から政権交代することになりました。

ただ、少数与党による連立政権となる見通しで、不安定な政権運営を強いられる可能性もあります。

アヌティン氏は、1966年生まれの58歳で、これまでに副首相を務めたほか、内相や保健相なども歴任しました。

タイでは、長年にわたってタクシン派と軍に近い保守派との権力争いが続き、政治的な混乱が起きてきました。

現地には日系企業が6000社余り進出していて、新首相の選出で混乱が収束するのか、注目されます。

タクシン元首相が出国 国外逃亡か

一方、タイの入管当局はタクシン元首相が4日、プライベートジェットでタイを出国したと明らかにしました。

タクシン氏は2006年の軍事クーデターで政権を追われたあと、事実上の亡命生活を送っていましたが、おととし、15年ぶりにタイに帰国しました。

汚職などの罪で実刑判決を受けていたタクシン氏は、帰国後、体調不良を理由に刑務所ではなく病院で生活していたことが問題視され、9月9日には、この問題をめぐる裁判の判決が出る予定で、判決次第では収監される可能性もあります。

また、次女のペートンタン氏が首相を失職し、政権交代の可能性が高まっていたことから、タクシン氏の政治的影響力の低下が指摘されていました。

タクシン氏はSNSで、知り合いの医師がいる中東のドバイに到着したことを明らかにした上で、「9日の裁判に出廷するために8日までには戻る」と主張していますが、地元メディアは政治的に窮地に陥ったタクシン氏が国外逃亡した可能性があると伝えています。

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