ケネディ厚生長官㊨はDTC広告の禁止を支持する(ワシントン)=ロイター

【ヒューストン=赤木俊介】トランプ米大統領は9日、患者を含む一般消費者に向けた医薬品広告の取り締まりを強化するよう指示する大統領覚書に署名した。医療用医薬品の服用時の副作用やリスクを明示するよう製薬会社に求め、違反する企業に対し警告を送付する。

日本や欧州などと違い、米国では医師が処方する医療用医薬品の直接広告が許されている。医療従事者を介さずに消費者へ直接医薬品を宣伝する「ダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC)」広告と呼ばれ、米食品医薬品局(FDA)が管轄する。

「米国を再び健康に」(Make America Healthy Again)をスローガンに掲げる米政権の「MAHA委員会」が同日発表した報告書にもFDA、厚生省、連邦取引委員会(FTC)と司法省が連携し、DTC広告の規制に違反した企業の監視・取り締まりを強化すると明記した。

同報告書はSNS上のインフルエンサーや遠隔医療(テレヘルス)サービスによる医薬品の宣伝は誤情報を発信するリスクが特に高いとして、取り締まりが優先されると説明した。

米政府高官は9日、記者団に「我々は製薬大手に対し、予算の20〜25%をマーケティングや広告ではなく、薬価引き下げに費やしてほしいと考えている」と説明した。製薬業界の専門ニュースサイト「フィアス・ファーマ」によると米製薬業界は24年、計101億ドル以上を広告などマーケティングに投じた。

ワクチン懐疑派のケネディ厚生長官は米保健政策の方向転換を進めている。同氏は過剰投薬が小児慢性疾患の増加につながると主張しており、大手製薬会社を批判している。24年の大統領選挙中にDTC広告の禁止を支持すると表明した。

FDAは1997年にDTC広告の規制を緩和した。テレビ・ラジオ広告内で電話番号やホームページのアドレスなど、消費者が詳細情報にアクセスするための手段を提供する限り医薬品の副作用や効果、使用上の注意などを詳しく説明する必要はないと決めた。

半面、近年は規制強化に向けた動きが活発化している。FDAは23年11月、DTC広告に医薬品の効果や重大リスクを明確に、そしてわかりやすく伝えることを義務付けた。25年6月にはサンダース上院議員や民主党上院議員らがDTC広告を禁止する法案を共同で提出した。

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