
イスラエル軍が9日、イスラム組織ハマスの幹部を狙いカタールの首都ドーハを空爆した。カタールに対する明白な主権侵害であり、強く非難する。
カタールはイスラエルとハマスとの停戦交渉の仲介国だ。そこに攻撃を仕掛けるとは言語道断で、交渉にも響く。外交努力をないがしろにする暴挙を国際社会は許してはならない。
ハマスによると空爆でメンバー5人が死亡した。イスラエルのネタニヤフ首相は、8日にエルサレムでパレスチナ人が銃を発砲して6人が死亡し、ハマスが犯行を認めた事件への報復だとした。
それでカタール攻撃を正当化するのは、あまりに無理がある。カタールは「国際法違反」だと猛反発した。アラブ諸国や欧州主要国とともに、日本政府も「強く非難する」としたのは妥当だ。
カタールはハマスの政治部門に拠点を提供してきた。イスラエルには、カタールの支援が育てたハマスが2023年に自らを奇襲したとの不信もあるだろう。しかしいかなる理屈であれ、一方的な武力行使は地域を不安定にし、国際秩序を脅かす。
トランプ米大統領は、攻撃は「私の決定ではない」とした。米軍を通じて事前に把握したが、阻止するには「遅すぎた」と釈明した。後ろ盾の米国すらイスラエルに距離を置く。制御が利かない現状は危ういというほかない。
イスラエルは国際法や国際社会の声を無視してよいと勘違いしてはならない。パレスチナ自治区ガザでは飢餓など人道危機への批判を意に介さず、中心都市ガザ市の制圧を進めている。専横に歯止めをかけるため、同盟国の米国こそ圧力を強める必要がある。
今回の攻撃でハマスが態度を硬化させ、ガザ停戦交渉がますます停滞する恐れがある。停戦と人質解放に向けては、協議による歩み寄りが最善だ。イスラエルは交渉に戻るべきだ。国際社会はカタールなどの仲介努力への支持を新たにしなければならない。
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