スズキはインドでつくったクルマをアフリカに輸出する(マルチ・スズキのニューデリー近郊の工場)

今月20日から横浜市で第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が開幕する。各国から多数の首脳や閣僚、経済人が来日する予定で、日本企業がアフリカとの距離を縮め、成長市場に足がかりを築く契機にしたい。

日本からアフリカへの直接投資は過去数年上向いてきたが、投資残高ベースで見ると、2013年末のピークをいまだに下回っている。政府開発援助(ODA)絡みの案件の減少でかなりの企業がアフリカ事業を縮小し、その穴がまだ埋まっていないのだ。

この現状は残念といわざるを得ない。50以上の国に分かれ、国によっては不透明な規制や税制など特有の難しさはあるが、一方で豊富な鉱物資源や21世紀いっぱいは人口が増え続ける潜在的成長力の大きさなど魅力も大きい。

現地の課題に向き合い、自社の強みを生かしてアフリカで何ができるのか、各企業や経営者は真剣に考えるときだ。

例えば富士フイルムは重さ3.5キロの持ち運びできるX線撮影装置をザンビアなど約20カ国で展開し、医療インフラの貧弱な地域での結核の診断に威力を発揮する。X線技師のトレーニングなど人材育成にも寄与している。

商船三井はトルコ企業と組んで、セネガルの沖合に浮体式の巨大設備を設け、天然ガスを燃料とした発電を実施する。海上での発電は陸上設備より低コストで素早く始められる利点がある。

サプライチェーンも工夫したい。アフリカ東部はインドから距離が近く、消費者の嗜好にも共通点が多いことから、スズキはインドで生産したクルマをアフリカ各国に輸出する。ダイキン工業もインド拠点を核として、アフリカ市場を開拓する考えだ。

これまで日本企業の世界展開は米国基軸だった。だがトランプ米政権が保護主義に傾くなかで、米市場への過度な依存はいまやリスク要因だ。地理的にバランスのとれた事業構成を実現するためにも、アフリカ重視は一つの道だ。

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